ももいろクローバーZ 玉井詩織「17年やっていても『初心者』になることがたくさんある」活動20周年を迎えて

脚本家・生方美久が書き下ろしたストーリー写真集『しおどき』

――『しおどき』は「ストーリー写真集」。これまでにないような形式の写真集ですが、どのような経緯で制作することになったのでしょうか?

玉井:1冊は皆さんが思い描くような「王道の写真集」にしましたが、もう1冊は自分らしさを出すこと、そして「新しい挑戦をしたい」と思い、どんな写真集にしようかとスタッフの皆さんで打ち合わせを重ねていました。

 私は、昔から「自分の個性がよく分からない」と思っていて、グループの中でも「すごく普通だな」ということは常々感じていました。自分という器に、いろんな人に味付けしてもらうことで「自分らしさ」が出るのかなと思っていて、今年開催したソロライブもストーリー仕立てにしたんです。今回の写真集でも、ストーリーに落とし込むことで『たまゆら』で見られないような表情を見てもらえるかなと思って、ストーリー写真集を作ることに決定しました。

――『しおどき』は、大ヒットドラマ『silent』『海のはじまり』を手がけた脚本家・生方美久さんが物語を書き下ろしたとのことで、豪華ですよね。

玉井:生方さんは、違う世界ではありますが、同世代で活躍されているクリエイターさん。私もイチ視聴者として、作品を見ていました。そんな方とご一緒できるのは願ってもいないことでしたが、打ち合わせで生方さんをご提案いただいて。「まさかやっていただけるとは」と思っていたので、ご一緒できて嬉しかったです。

――『しおどき』は、全く異なる人生を歩む3人の女性を描いた物語が収録されています。どのようにして、この物語が決まったのでしょうか?

玉井:生方さんとは白紙の状態で打ち合わせをさせていただいて。私とは同世代でありながらかけ離れたキャラクターを演じると表情に幅が出るんじゃないかとご提案いただきました。ストーリーは生方さんにお任せしていたのですが、日常についての質問を受けただけなのに、そこから世界が広がっていくことに驚きましたね。

 実際にいただいたプロットを読んでも「ストーリー写真集だけにしておくのがもったいない!」と思いました。映像としても見てみたいと思うほどに、広がりを持っている主人公のキャラクター像を作り上げてくださいました。

――ドラマや映画ではセリフを発することで同時に表情が生まれますが、今回は写真集なので表情だけの芝居というのは、また違った難しさがあったのでは。

玉井:最初は演じる塩梅にも悩みましたし、こっぱずかしさもあって、難しかったですね(笑)。最初は「下北沢で自由に生きるフリーター」から撮影していたのですが、実際に下北沢の街を歩きながら撮影していたので、その場に立つことで自然と生まれてきた感情を大事にしました。セリフはないけど、一人でエチュードをしているような感覚で撮影していました。

玉井詩織ストーリー写真集「しおどき」(©️SDP)
玉井詩織ストーリー写真集「しおどき」(©️SDP)

 

――「下北沢で自由に生きるフリーター」は、表紙にも採用されています。溌剌とした笑顔も役柄なので、アイドル活動で見せる表情にも近いのかと。

玉井:確かに、三つの役柄でも一番やりやすかったキャラクターです。

 難しさを感じたのは、1つ目のエピソードの「ハイスペ女子のラブストーリー」。シチュエーション的にも役柄的にも、私から最もかけ離れていました。特に、タクシーのシーンはすごく静かな空気の中で撮影されて、スタッフさんもその空気を作ってくださって。カメラマンの濱田さんも、私の気持ちが動いた瞬間にシャッターを切ってくださるんです。狭い空間での撮影だったので、映像のお芝居に近い感覚で演じていました。――「下北沢で自由に生きるフリーター」は、表紙にも採用されています。溌剌とした笑顔も役柄なので、アイドル活動で見せる表情にも近いのかと。

 共感できたのは3つ目のエピソードの「自宅で過ごすOLの日曜日」で、私もキッチンに洗い物が溜めちゃうこともあって朝起きて「わ~」と思うこともあるので(笑)、そういうシチュエーションはすごく共感できました。

玉井詩織ストーリー写真集「しおどき」(©️SDP)

――三人の全く違う人生を歩む女性を演じてみて、「もう一つの人生」に思いを馳せることはありましたか?

玉井:そうですね。私は小学4年生からこのお仕事を始めていたので、この生活が普通になっていて、別の人生を考える機会ってあまりなかったんです。ただ今回のような撮影もそうですし、一般の仕事をしている友達からの悩みを聞くと「自分がそういう立場だったらどう感じるんだろう」と、想像することも増えました。

――羨ましいな、と思うことも?

玉井:羨ましさは常々感じています。今の仕事や環境に満足していないということではないんですけど、私は好奇心が旺盛なので、いろんなことを知りたいと思うんです。例えば「ハイスペ女子のラブストーリー」のように強く生きる人生もかっこいいなと思いましたし、「下北沢で自由に生きるフリーター」のように好きなことをして生きるのも、自分にはなかった青春なので、また違う感情に出会えてたのかもしれないなと感じますね。

 

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