映画『国宝』だけじゃない! 歌舞伎に落語、伝統芸能の世界を描く名作漫画3選
6月に公開された映画『国宝』が、興行収入85億円を突破するほどの大ヒットを記録中だ。同作は日本を代表する伝統芸能、歌舞伎を題材としており、吉沢亮演じる天才的な女形と、横浜流星演じる歌舞伎名門の御曹司によるライバル関係を描いたストーリーが大きな熱狂を巻き起こしている。
そこで今回は、伝統芸能を題材とした名作漫画を紹介。鑑賞後の熱気が冷めず、“国宝ロス”状態になっているという人は、ぜひ参考にしてほしい。
■嶋木あこ『ぴんとこな』(小学館)
『国宝』と同じく歌舞伎を扱った漫画として紹介したいのは、嶋木あこの『ぴんとこな』。少女漫画雑誌『Cheese!』(小学館)で2009年から2015年まで連載されていた作品で、2013年には実写ドラマ化もされた。
主人公の河村恭之助は歌舞伎界の名門生まれという家柄で、ルックスにも恵まれていることから、女性ファンにチヤホヤされている。しかし芸に対する情熱はほとんどなく、雑な演技を披露する日々を送っていた。
それに対してライバルの澤山一弥は歌舞伎の血筋ではないが真摯に芸に打ち込み、実力でのし上がることを目指す人物だ。作中ではこの2人の歌舞伎に賭ける青春が描かれていく。
また2人は役者としてだけでなく、1人の女性をめぐっても対立する。恭之助は自分の演技を酷評した歌舞伎好きの少女・千葉あやめに惹かれていくが、彼女は一弥に想いを寄せているのだった。
こうして伝統芸能の奥深い世界が描かれるとともに、複雑な恋愛模様が展開されるのが同作の見どころ。基本的な設定だけでなく、男と男の濃密なライバル関係という点でも、『国宝』と通じるところがあるストーリーだ。
■末永裕樹(原作)、馬上鷹将(作画)『あかね噺』 (集英社)
日本の伝統芸能といえば、「落語」も代表格の1つ。『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載中の『あかね噺』は、女性を主人公とした落語漫画として注目を集めている。
主人公の桜咲朱音は、落語家の父・阿良川志ん太に憧れて育った少女。しかし朱音が小学生のとき、最高位・真打への昇進をかけた大舞台で、父は落語界の大物・阿良川一生の意向により破門されてしまう。そして物語の舞台は6年後に移り、自身が真打になることを目指して突き進む朱音の活躍が描かれていく。
一見コミカルな雰囲気ではあるが、朱音が全力で落語に打ち込み、ライバルたちと切磋琢磨しながら成りあがっていく姿にはスポ根的な熱さがある。また、恋愛要素がほとんど存在しないというストイックな作りになっているところも同作の魅力だ。
とはいえ作中で披露される「噺」には丁寧に説明が加えられるので、落語に詳しくない人でも安心して楽しめるだろう。2026年にはTVアニメが放送されることも決定したので、落語ブームを巻き起こすきっかけとなるかもしれない。