お笑い界の“天下”は誰の手に? 霜降り明星・せいや、相席スタート・山添……識者が注目する5人の名前

制作者が求める調整力、相席スタート・山添寛

相席スタート『恋愛迷路は気づかないと抜けられない』(ワニブックス)

 次に名前が挙がったのは、相席スタートの山添寛。彼の強みは、その場の空気を読み、自身の立ち回りを自在に調整できるスキルにある。

「山添さんはお笑いのスキルが高い上に、その場に合わせて調整ができる人。芸人ばかりの番組だったらものすごく笑いに走るけど、そうでない場面では普通に立ち振る舞うこともできるので、作り手側からするとありがたいタイプの人だと思います。近い将来、MCの仕事も増えていくのではないでしょうか」

 お笑い色が強い番組だけでなく、情報番組などでも的確な振る舞いができる山添は、まさしくテレビ向きの芸人と言えそうだ。

自然体と対応力で勝負する、永野

 一方で、独自のポジションを確立しつつあるのが、永野だ。 彼の魅力は、テレビでも気負うことのない「自然体」にあるという。

「永野さんは、発言が毒舌と捉えられることもありますが、『テレビだから攻めたことを言おう』としているわけではなく、裏表のない人なんです。だからこそキャラクターにブレがないし、世間にも徐々に『永野はこういう人』と受け入れられ始めているので、今後さらに仕事が増えていきそうな感じがします」

 また、所属しているのが大手事務所ではないことも、永野の強みになっていると指摘する。

「吉本の芸人は、『ラヴィット!』(TBS系)や『アメトーーク!』(テレビ朝日系)のような集団芸を見せられる番組で輝く傾向にあります。ですが、永野さんは独立した芸風なので、芸人との掛け合いもさることながら、そうではない文化人とトークするような番組でも成立させられる。上の世代でいうと、東野幸治さんに近いタイプで、お笑い色の濃くない番組にも向いているのが強いと思います」

女性芸人の期待の星

 女性芸人ではどうか。ヒコロヒーなどがすでに確固たる地位を築いているが、その次にくるスターとして、ラリー氏は2人の名前を挙げる。

 1人目は、2024年の『女芸人No.1決定戦 THE W』で準優勝を飾った紺野ぶるまだ。 実力はありながらも、なかなかチャンスに恵まれなかった紺野だが、ここにきて再評価の機運が高まっているという。

「もともと面白さには定評があり、トーク力もある方でしたが、最近、佐久間宣行さんのYouTubeに出演されたことをきっかけに、再評価の波が来ています。ご結婚されていて、お子さんもいて、家庭や子供の話もできるので、ママタレとしての需要も高いと思います」

 ラリー氏によると、横澤夏子や藤本美紀が切り拓いた、説教臭くなく爽やかに家庭や育児を語る「新しいママタレ」の路線に、紺野がハマるのではないかという。

 もう1人が、ぱーてぃーちゃんの信子だ。 現在はトリオでの活躍が目立つが、1人でも十分に通用するポテンシャルを秘めているとラリー氏は指摘する。

「信子さんは、先輩や大御所にちょっと失礼な感じで絡んでいってもなぜか好かれる、そういうパワーがある方です。また、ロケが上手なので、なすなかにしやずんの飯尾さんのような“ロケといったらこの人”というレベルのタレントになってきていると思います」

 その物怖じしないキャラクターは、かつてのフワちゃんを彷彿とさせるが、人を不快にさせない絶妙なラインを保っているとラリー氏は分析する。この愛される力で、若者だけでなく中高年層からの支持も集めるタレントになりそうだ。

テレビで売れるための絶対条件「華」の存在

 では、数多いる芸人の中から「テレビタレントとして売れる」ために、必要なものは何なのか。ラリー氏は、トーク力や仕切り力といったスキルは大前提とした上で、欠けてはならない要素に「華」を挙げる。

「コアなお笑いファンは、ネタやトークの中身で芸人を評価しますが、テレビの視聴率を支えているのは、高齢者をはじめとする一般層です。そういったテレビを“ながら見”している層からすると、ぱっと見たときの華やキャラクターがすごく重要になってくるんです」

 この点で、せいやや信子は圧倒的な「華」を持っているとラリー氏は語る。 画面に映った瞬間に「なんだこの人は」「面白そう」と思わせる力、それがテレビという受動的なメディアにおいて重要なファクターなのだ。

 この点は、YouTubeとの決定的な違いでもあるという。

「YouTubeは、主にエンタメへの感度が高い若年層が観るので、企画内容で判断してもらえる。見た目が良かったり、キャラが仕上がっていたりしなくても、やっていることが面白ければ人気出るので、テレビとは完全に市場が違うのだと考えられます」

 視聴者が能動的にコンテンツを探しに来るYouTubeでは、企画力だけでスターになることもできる。お笑い界の勢力図は、今後もメディア環境の変化とともに、姿を変えていくことだろう。

 テレビ向きの“華”を兼ね備えたせいや、信子、永野。そして、独自の“城”でファンを増やし続けている令和ロマン、さらば青春の光、ラランド。ラリー氏が挙げた次世代のスター候補の動きを注視すれば、5年後、10年後のお笑い界が見えてくるのではないだろうか。

関連記事