【漫画試し読み】魔法も特殊能力もない、現代の鍛治師が異世界で最強!? 『青雲を駆ける』が描く刺激的なスローライフ
異世界ファンタジーが人気ジャンルとして定着して久しいなか、チート能力ではなく、現実には失われつつある技術を使って奮闘する主人公が共感を誘い、人気を博している小説『青雲を駆ける』。そのコミカライズが、なんと通常の横組み版と、縦読みのウェブトゥーン版の2形態で同時に進行し、作品の魅力を立体的に伝えている。いずれも人気コミックサイト「ヒーローコミックス」で連載中だ。
現代日本において、ほんのわずかにしか残らない野鍛冶の技を持つ男エイジ。彼は気がつけば記憶もなく、見知らぬ場所に立っていた。そこは鉄器ではなく、青銅器が使われている世界。暮らしは貧しく、技術は未熟な異世界だった。ひょんなことからエイジは美しい未亡人のタニアと同居することになる。村で生きていくためには、鍛冶師として、何一つ設備も材料もない状態から、三ヶ月で作品を一つ作り上げ、自分の必要性を認めさせる必要があった。無事試練をクリアしたエイジは、村の一員として認められ、精力的に働いていく。タニアとの楽しい新婚生活も束の間、その目覚ましい活躍からエイジは領主に目をつけられてしまう。生きて帰ってこれない、と忠告を受けながらも、労役という義務を果たすため、エイジは単身領主の町に向かう--。
リアルサウンドブックでは、原作者の肥前文俊先生と、著者としてクレジットされている漫画家の白田クロノスケ先生を直撃。ほっこりとしたスローライフを描きながら、職人の技術による“異世界開拓”というワクワク感も魅力の本作について、じっくり話を聞いた。
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『青雲を駆ける』肥前先生&白田先生インタビュー
ーー『青雲を駆ける』は現代では失われつつあり、しかし異世界/未開の地では貴重な「技術」とスローライフ、素敵なヒロイン、開拓記&サクセスストーリー……と、多様な魅力を備えた作品です。まず、この物語がどう生まれたのか、着想のきっかけを教えてください。
肥前:現代の日本は、皆が大量生産品を使っている世の中で、ほとんどの人が、職人が手で作った包丁を使ったことがないと思います。主人公のエイジは、そんな現代に生き残ったわずかな野鍛冶として暮らしている青年です。今では廃業されてどんどんと数を減らしている野鍛冶ですが、実は技術面ではどんどん進歩していて、今でも大量生産できない特殊な道具を必要とする一部の職人には、強く求められた仕事だったりします。そんな野鍛冶が、もっと古い時代に行ってしまったらどんな活躍をするのだろう? というところが始まりでした。
ーーコミカライズを手掛けるにあたり、白田先生は『青雲を駆ける』という物語についてどんな印象を持ちましたか。
白田:最初に原作を読んだときは、非常に骨太でしっかりした印象を受けました。そのため、自分に描けるのかと不安を感じましたが、鍛冶やさまざまなモノ造りについて調べているうちに、興味が湧き、今では楽しみながら描くことができています。実際に博物館で「箱ふいご」を見たときは、「これだ~!」と感動しました。
ーー原作ファンからしても、タニアさんがとても美しく魅力的で、色気もバッチリ表現されており、また真面目で誠実なエイジもイメージにぴったりです。牧歌的な風景も素敵ですが、作画にあたってどんなことを意識していますか。
白田:異世界モノというと、どちらかというと「中世ヨーロッパ」なイメージがありますが、『青雲を駆ける』では古代ギリシャ・ローマ……もしくはそれ以前の文明を意識して書かれているので、その雰囲気を出来るだけ再現できればいいなと考えながら作画しています。たまにオーパーツを出現させてしまうかもしれませんがご容赦を(汗)。
ーー肥前先生は、そんな白田先生の作画についてどう受け止めていますか。
肥前:私の作品は大量の道具や設備、人物が登場します。特に舞台となる青銅器時代ぐらいの文化って、資料も非常に少ないんです。文章ではサクッと書ける場面でも、絵に起こすのは大変です。なので相当面倒な作品だと自分では思っているんですが、見事に描いていただいていて、プロの技に感心しています。人物の描き分けもそれぞれ特徴がで出ていて、凄いですね。
ーー本作を代表する二人、エイジとタニアについて、お二人はどんなキャラクターだと捉えていますか。
肥前:おごらない人、でしょうか。普通、飛び抜けた技術を持ってると、傲慢になったりすることも多いと思うのですが、エイジもタニアも、皆が豊かに暮らせることを願っています。作者の私よりよっぽど人間ができてますね。人として愛せるキャラだと思っています。
白田:エイジはタニアさん以外眼中にない真面目な堅物職人……。そしてなんと言っても「異世界モノ」として特殊能力を持たないというところが特殊だなあと感じています。タニアさんは 純粋で一途な女性。それゆえにやきもち焼きなキャラクターでもあり、そこがまた魅力かと。
ーー本作には二人以外にも、マイクにジェーン、フェルナンドなど、素朴で魅力的なキャラクターが多く登場します。あえてエイジとタニア以外でお気に入りのキャラクターを一人上げるとしたら?
肥前:猟師のマイクですね。作中では馬鹿なことも良くするんですが、いつも楽しそうで、いるだけで周りが明るくなるタイプ。感情豊かで周りの大切な人のために怒ったりも出来る、頼れる兄貴って感じが気に入ってます。
白田: 仕事上で筋肉おじさんを描く機会があまりないのでフィリッポを描くのが楽しいです。他のキャラクターもそれぞれ魅力的で気に入ってます! ……そしてタニアさんの作画は魅力的に!! それが第一です。
ーー本作は横組みのコマ割り漫画とともに、縦読みのウェブトゥーン版も同時展開されています。それぞれに魅力があると思いますが、肥前先生はどんな感触を持っていますか。
肥前:言葉だけだと、「同じじゃないの?」って思ってたんです。ですが、実際に目で見てみると、ぜんぜん違う作品みたいに印象が変わって驚きました。元来の横組みになれた人は、そのまま読むのも良いと思います。ただ、ウェブトゥーン版は非常に面白さを感じています。というのも、今ウェブトゥーンは似たようなジャンル、コマ組み、構成になっていて、読者が見飽きてしまう、という問題があるんですが、その欠点を補えた作品になってるんじゃないかなと。
ーー多くの魅力的な要素があり、かつ漫画として2つの表現形式で読むことができる本作。これから第一話に触れる読者に対して、一言メッセージをお願いします。
肥前:真っ赤に燃えた鉄を金槌でカンカン叩く。鍛冶師ってとても不思議な魅力のある仕事だと思います。そんな現代の鍛冶師が、まだまだ技術の未発達な古代に行って活躍するって聞くとワクワクしませんか? ぜひ一度読んでみてください。
白田:魔法も特殊能力もない、異世界での村生活をお望みならぜひご一読ください!
『青雲を駆ける』
作品URL:https://www.infos.inc/fandom/comic/hero03/