【漫画】もしも夫に殺意を抱いたら……? 妻たちのリアルな本音に心揺さぶられる『夫よ、死んでくれないか』

 テレビドラマ『夫よ、死んでくれないか』(テレビ東京)が好評放送中だ。『夫を社会的に抹殺する5つの方法』『夫の家庭を壊すまで』に続く“全夫が震えるシリーズ”の第三弾で、原作はNHKでドラマ化された『デフ・ヴォイス』で知られる推理作家・丸山正樹の同名小説。刺激的なタイトルが目を引く一方で、女性を取り巻く問題を鋭く捉えた社会派の作品であり、全く先が読めない良質なミステリでもあって、その人気から現在はコミカライズも進行中だ。原作ファンも、ドラマで本作を知った人も、まずはコミック版の第一話を読んでみてほしい。

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『コミック版 夫よ、死んでくれないか』(双葉社)

 幸せな結婚から5年、トキメキはため息に変わり、冷め切った夫婦生活を送る甲本麻矢。仕事も忙しいなかで、大学時代からの友人、加賀美璃子、榊友里香とグチを言い合うのが唯一のリフレッシュタイムだった。璃子は夫の浮気で離婚済み。友里香は育児に非協力的な夫に辟易しており、会話のオチはいつも「夫、死んでくれないかしら」。そんななか、我慢の限界を迎えた友里香が夫を突き飛ばしてしまいーー。

 結婚していれば多かれ少なかれ抱えているだろう、パートナーへの不満。リアルな内容に共感したり、自身の行いを振り返って襟を正したりしていると、一気に物語に巻き込まれていく“ノンストップ感”が本作の魅力だ。

 コミック版では小萩紀歩による美しくも緊張感のある作画がさらに没入感を高めており、かつての蜜月も、冷え切った現在も、夫婦の関係が空気ごと伝わってきて心が揺さぶられる。家庭と同様に光と闇のある職場の描写もしかり、3人の“女子会”の描写も絶妙で、怒り、諦め、楽しさも含み、本音と冗談が入り混じったリアルな言葉たちが印象に残る。ドラマをさらに深く味わいたいという人は、コミック版でそれぞれの登場人物の表情をじっくり見て、その背景に思いを馳せながら読み進めるといいだろう。

 第二話以降の具体的なネタバレは控えるが、原作やドラマのあらすじにもあるように、麻矢の夫・光博が突然失踪することからミステリーは加速していく。敵は必ずしも「夫」だけでなく、スカッとする復讐劇を期待していると、心が軋む展開が待っているのもまた、本作の面白いところだ。

 些細な日常の積み重ねが永遠の愛情にも、激しい憎悪にもなる夫婦関係を起点に、広く人間関係のあり方について考えさせられる『夫よ、死んでくれないか』。手軽に読めて、原作の魅力を巧みに伝えているコミック版をチェックしてみてはいかがだろう。

■書誌情報
『コミック版 夫よ、死んでくれないか』
著者:小萩紀歩、丸山正樹
価格:825円
発売日:2025年5月19日
出版社:双葉社

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