【話題作試し読み】『先輩はおとこのこ』ついに完全完結! 切実で優しい青春ドラマを描いた、国産webtoonの金字塔

 「LINEマンガ インディーズ」への投稿から本連載まで駆け上がり、テレビアニメ化・アニメ映画化も果たした人気webtoon『先輩はおとこのこ』(ぽむ)。海外でも好評配信中の同作が4月17日、前日譚を含め完全完結を迎えた。連載を追いかけてきたファンからすると寂しさが募るが、原作マンガに触れたことがなかった人がその魅力を知り、まとめ読みする絶好の機会だ。

 『先輩はおとこのこ』は2021年12月に本編が完結し、2023年12月から前日譚となる「出会い編」(101話~)が連載されてきた。主人公は、幼い頃からかわいいものが好きで、セーラー服&ウィッグ着用で高校に通う“男の娘”=花岡まこと。そんなまことを女子だと勘違いして告白し、男子だとわかったあとも追いかけてくる愛らしい後輩・蒼井咲、そして、まことを見守りながら秘めた思いと共に日々を送ってきた幼馴染の大我竜二(りゅーじ)とともに、みずみずしいドラマを紡いできた。

 物語は若年層が抱く複雑な感情がひとつの軸になっているが、それ以上に、世の中が考える「普通」と自分の本心の間で葛藤しながら、成長していく3人の姿から目が離せない作品だ。コミカルな描写で笑わされるシーンも多く、きちんとエンタメしながら切実なテーマを丁寧に伝えているのが印象的で、“本編”が完結した100話には、別れを惜しみつつ「最高の最終話でした」「みんな大好き」「神作」など絶賛のコメントが相次いでいた。

 そんな本作の魅力をさらに深掘りし、キャラクターと物語への解像度を大きく上げたのが、前日譚となる「出会い編」だ。まことが“男の娘”になった経緯が描かれるとともに、筆者が特に印象に残ったのが、読者の誰もが愛する、まことと咲にとってのヒーロー的ポジション・りゅーじ。正解のない問題に葛藤しながら、好奇の目を向けられがちなまことをさりげなく守ってきた彼は、もともとどんな少年だったのか。幼い彼らの姿は微笑ましくもあり、未熟さと純粋さゆえに傷つけ、傷つきながら培ってきた関係性を知ると、第1話から読み返したときの切なさと感動が倍増するだろう。「出会い編」の完結は、『先輩はおとこのこ』という物語の始まりでもあるのだ。

 現在のトレンドである縦読み&フルカラーのwebtoonというシーンのなかで、人気の異世界ファンタジーや刺激的なアクション/復讐劇などではなく、優しく切ない人間ドラマで大ヒット作を生み出したぽむ氏は期待の作家だ。少し気が早いかもしれないが、まずは『先輩はおとこのこ』の世界にじっくり浸り、見せ物にされる人生に絶望していた人魚・ギノと、「姫」と名乗る謎の少女をめぐるファンタジー作品『ノアは方舟』を楽しみながら、新作を待ちたい。

『先輩はおとこのこ』
作品URL:https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0000602
コピーライト:©pom/LINE Digital Frontier

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