大手出版社・新潮社の本館&倉庫が「登録有形文化財」に 街並み景観にも大きく貢献したことが評価
株式会社新潮社は、2025年3月21日に開催された文化審議会において、同社の本館および倉庫が登録有形文化財(建造物)として登録されるよう答申を受けたことを発表した。これにより、官報での告示を経て、正式に文化財としての地位を得る見通しとなる。
新潮社は、1896年に創立された出版社。文芸誌『新潮』(1904年創刊)、『小説新潮』(1947年創刊)、のほか、ティーン向けファッション誌『nicola』などさまざまな雑誌を刊行している。
新潮社の本館と倉庫は、新宿区矢来町に位置し、地域の出版文化を象徴する存在として長年親しまれてきた。戦後の出版業の隆盛を背景に築かれたこの建築群は、近代建築の美しさと実用性を兼ね備えており、出版業を基盤とする新宿区の地場産業を体現する建築物として高く評価された。また、矢来地区の街並み景観の形成にも大きく貢献してきた点が、文化財としての価値を押し上げている。
本館は、簡明ながら格調高い外観を持ち、内部には古今東西の文字文化を象徴するレリーフが施されるなど、知の殿堂としての風格を備えている。倉庫もまた、出版活動を支えるインフラとしての機能美を感じさせる佇まいで、歴史的建築としての魅力に満ちている。
新潮社は創業以来、日本の文芸・文化の発信地としての役割を果たしてきたが、今回の文化財登録によって、その歩みが建築的側面からも公式に認められることとなる。