OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』

オカモトショウが語る、いまイチオシの青年漫画2作品! 『ハヴィラ戦記』&『だれでも抱けるキミが好き』を読め

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品を紹介する「月刊オカモトショウ」が約9ヶ月の充電期間を経て再始動!今回は週刊ヤングジャンプで連載中の『ハヴィラ戦記』(みのすけ)、そして、週刊ヤングマガジンで連載中、純情男子高校生とビッチ系ギャルの恋愛を描いた『だれでも抱けるキミが好き』(武田スーパー)を取り上げます!(森朋之)

今の社会の比喩として成立しているのがすごい

——『ハヴィラ戦記』は2024年4月から週刊ヤングジャンプで連載がスタートした作品です。

 まだ始まったばかりの頃から、絶対に面白くなるだろうと思っていたのでここで紹介しておきたいなと。まず設定とあらすじなんですが、奄美群島で発見された、人の言葉を理解する人型の小さな生き物・ハヴィラを描いた作品で。ハヴィラは人間の掌に乗るくらいの大きさで、絵的な世界観でいうと“ピクミン”とかと同じような感じですね。人間が使っているハサミなんかが巨大に見えるという。

——主人公はハヴィラの青年・忍野。ハヴィラは交配する“つがい”を決められていて、相手のマイに思いを寄せています。

 絶滅しかかっているので、人間が保護して増やそうとしているんですよ。言ってみたら飼育されている状態なんですよね。SFっぽい設定なんだけど、近未来の話とかではなくて、ある種のファンタジーという感じですね。ストーリーとしては、第1話の終わりで突然カラスが部屋のなかに入ってきて、そこにいたハヴィラに襲われるんです。カラスに食べられそうになってるところを救ってくれたのが、沖という名前のハヴィラの仲間。彼らはどうやら革命戦士みたいな存在で、人間に飼われているハヴィラを解放しようとしているんです。

——沖は忍野に「“保護区”から出て、“解放区”に来い」と告げますね。

 ハヴィラは絶滅しかかっていると言われているけど、じつはそうではないらしくて。もともとは特殊な能力を持っていて、自分たちだけの力で暮らしていたみたいなんですよ。沖はそれを取り戻そうとして戦っていて……とこんなふうに話すとバトルものかと思うかもしれないけど、今のところはそうでもなくて。主人公の忍野はどちらかと言うと“のろま”みたいな扱いを受けている男なんですよ。ただ、忍野は義理が高いし、約束は守るし、すごく信用できる友達みたいな存在で。そういう人のことを“契り系”って呼んでるですよ、自分のなかで。千葉雄喜さんの「チーム友達」が好きっていうのもあるんですけど(笑)。

——(笑)。“契り”は「チーム友達」の歌詞にありますね。

 “つがい”のマイもすごく大事にしてるし、完全に契り系の主人公なんですよ。すごくいい奴なんだけど、小さい頃にいろいろあって、わりと地味な人生を歩んできてたみたいで。人間に保護されていれば食べるものもあるし、このまま生活できそうだけど、だんだん「解放区に行くべきじゃないか」と思い始めるっていう。設定もストーリーもそうなんだけど、おそらく何かの比喩なんだと思うんですよ。

——なるほど。

 マンガの世界のなかで何が起きるかも楽しみだしーーそれくらい設定が凝ってるのでーーそれだけも面白いんだけど、今の社会の比喩として成立しているのがすごいなって。近年のジャンプでいうと『ルリドラゴン』だったり、ちょっと前ですけど『BEASTARS』もそうだと思うけど、「このキャラクターは人間社会でいうと」「自分の生活に当てはめたら」みたいにも読めるんですよね。今の自分たちの現実に置き換えられるような描写も既にちょっとずつ出てきているし、ここからさらに面白くなるだろうなと思っています。絵柄もいいんですよ。マニアックな雰囲気があるんだけど、すごく上手い。そのうえで王道を行こうとしている感じもあるし、期待しかないです。

——作者のみのすけさんはこれまで『監獄美術館の学芸員』『片隅のエデン』などの短編を描いていますが、どちらも“抑圧された環境からの脱出”“保護される者と保護する者”というテーマが共有しているのかなと。

 そうですね。作品ごとに「これはやったから、次はこれ」という感じで変化していく人もいますけど、「俺のやりたいことはこれだから」とさらに深く描くタイプの人もいて。たとえば 弐瓶勉さんもそうだと思うんですよ。『BLAME!』『シドニアの騎士』『人形の国』などを描いた方なんですけど、「これってもしかして、同じ世界のパラレルワールドなの?」みたいな感じで。みのすけさんもそういうタイプなのかもしれないですね。1月に2巻が発売されたばかりでまだ序盤。連載にも追いつきやすいので、ぜひチェックしてほしいです。

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