“萌え米”登場 人気イラストレーターが描いた「パックライス」米の価格高騰で販売戦略の多様化広がる?

■あきたこまちの新商品を発売したJAうご

JAうご産あきたこまちを使ったパックライスは、150g(お米1合)で、販売価格(税込)は1個入り350円~。2024年12月23日からJAうごオンラインショップや道の駅うごで発売。画像はJAうご公式ブログより。

  秋田県羽後町の一部エリアを拠点とするJAうごは、イラストレーターの西又葵とコラボしたあきたこまちのパックライスを12月23日から発売すると発表した。発売前日の12月22日には「道の駅うご」で西又も参加し、発売記念イベントも開催されるという。JAうごの公式ブログによると「女の子がお茶碗に(コメを)よそうイラスト」が描かれている。

  かつてのオタク文化全盛期を過ごしたオタクにとっては、記憶している人も多いかもしれないが、JAうごは2008年にパッケージにかわいらしい市女笠の女性の絵を描いた「美少女イラスト入りあきたこまち」を発売して話題になった。

  それまでも、パッケージにかわいい女の子の絵が描かれた米袋は、千葉の「ふさおとめ」などが存在していた。ところが、JAうごの場合、美少女ゲームを代表するイラストレーターだった西又葵の描きおろしということもあって、注文が相次いだ。ネットでは“萌え米”などと呼ばれた、類似商品が各地で発売されるほどの反響になった。

『西又葵画集 Vivid』(西又葵/著、角川書店(角川グループパブリッシング)/刊)

  西又はあきたこまちの発売以前にも、羽後町で発売された「スティックポスターin羽後町」にイラストを寄せており、さらに同町で開催されたイベント「かがり美少女イラストコンテスト」に審査員として招待されていた。こうした縁を機に実現したのが、JAうごのあきたこまちとのコラボだったといわれる。

  この時代に多数発売されたご当地と美少女キャラのコラボ商品のほとんどが既に発売されていない中、西又とJAうごの関係は継続し、16年にわたって販売が継続しているのは驚きである。SNSを見てみると、当時から継続して購入している人も多いようで、コメの販路拡大に一定の成果はあったとみていいだろう。

■人々のコメ離れを防ぐことはできるか

  今年は“令和の米騒動”が起こり、スーパーやドラッグストアからコメが一斉に消え、買い占めや転売が行われるなど社会問題化した。現在ではコメ不足は解消されているが、解消後もコメの価格は高いままだ。11月25日のNHKの報道によれば、秋田県産のあきたこまちの10月の価格は60キロあたり2万3708円で、昨年の同時期に比べて55%高いという。

 食文化が多様化している中、人々のコメ離れが一層進むのではないかと危惧されている。また、かつては東北地方と言えば旨いコメの名産地と言われたが、近年は北海道や九州のコメも品質が上がっており、ブランド化が進んでいる。そうした中で、JAうごが西又とコラボしてパックライスを発売したのは、差別化を図るうえで意欲的な取り組みといえる。

 一方で、美少女イラストを使用した商品はもはや珍しいものではなくなった。今や日本中どこの道の駅に行っても女の子やイケメンのイラストを使った商品は見かけるし、ご当地萌えキャラも普通の存在になっている。オタク文化もかつては考えられないほど、社会に浸透した。そんななかでパイオニア的存在のJAうごがいかに商品を売り込んでいくのか、今後の取り組みは注目に値するといえよう。

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