『らんま1/2』のファンブックは何が画期的なのか? 作品がその後の漫画家に与えた影響を考察
ファン垂涎の名著、復刻版が発売
高橋留美子氏の名作漫画『らんま1/2』の新作アニメが絶賛放送中であるが、1996年に出版された『らんま1/2 メモリアルファンブック』の復刻版が11月18日に発売される。表紙を飾るのはオリジナル同様、男乱馬と女らんまである。当時の高橋の丸っこい絵柄に、懐かしさを感じるファンも多いのではないか。
現在でこそ、漫画のイラスト集やファンブックは多く発売されるが、90年代はまだまだ珍しい存在だった。本書は当時描き下ろされたフルカラー集合イラストや、高橋が連載中に雑誌に掲載された扉絵やカットをフルカラーで多数収録しているほか、主要キャラから脇役まで、作品を彩ったキャラの解説も充実している。そして後半には高橋のインタビュー記事も掲載されている。
ファン必携だった一冊だが、既に絶版となっており、古書店やフリマサイトではオリジナルがプレミア価格で販売されている。引っ越しの際に紛失したり、何度も読み返してボロボロになっている人も多いはずだ。そんな古参ファンの間からも、「オリジナルを持っていますが、復刻版も買います!」と歓喜の声が上がっている。
多くの漫画家に影響を与えた高橋留美子
筆者の家には、妻が小学生の頃に予約注文して購入したオリジナルがある。妻は漫画家であるが、高橋の漫画に影響を受け、漫画家を志したと話している。同様の思いをもつ漫画家は多い。筆者がこれまでインタビューした漫画家、イラストレーター、アニメーターには高橋の影響を公言する人が非常に多い。いったいなぜ、高橋の漫画は凄いのだろうか。
高橋の漫画は“萌え”の元祖といわれるが、そのイラストの魅力を筆者の妻は「鮮やかな色使いと躍動感のキャラ」「見ているだけでワクワクしてくる」と語る。そして、漫画としてのクオリティの高さが圧倒的であるのは言うまでもない。
高橋はキャラづくりの名手である。『らんま1/2 メモリアルファンブック』を読むとわかるが、主人公から脇役、老若男女、そして人間以外のキャラまで、すべてのキャラが個性的なのだ。ビジュアルも一度見たら忘れられないインパクトがある。
1話完結の物語が多いが、テンポの良いコマ運びやセリフ、効果音の使い方など、漫画の教科書と言っていいほど一話一話の完成度が高い。最後のコマ、オチでもしっかり笑わせてくれるので、読後感もいい。漫画家を目指していたころ、作品作りの参考にしたという漫画家が多いのはそのためであろう。
そんな名作の魅力をギュッと詰め込んだ『らんま1/2 メモリアルファンブック』。古参のファンも、新作アニメを通じてファンになった人も、蔵書に加えたい一冊である。