〈ゴジラ〉エヴァパチンコ、コアラのマーチに銭湯まで、異色コラボ続々の背景 70周年の先に何を見据える?

■2024年、誕生から70周年を迎えたゴジラ

山崎貴『小説版 ゴジラ-1.0』(集英社)

  2024年に誕生から70周年を迎えたゴジラ。山崎貴監督による新作の製作発表も先日行われたばかりだが、それと並行して多数のコラボも行われている。ゴジラは以前よりコラボレーションが多いキャラクターであり、特に近年は新作映画が公開されるたびに多数のコラボ商品・キャンペーンが発表されてきた。

  ゴジラには版権元による公式の関連商品・グッズも大量に販売されているが、それらとは別に「既存商品やプロジェクトにゴジラがコラボレーションする」という形のプロモーションや商品・施策などが多数存在している。2024年に限ってリリースが確認できるものでも、佐賀県のような地方自治体から、東京ミッドタウン日比谷や新宿サブナード、ホテルグレイスリー新宿といった商業施設や宿泊施設、柿の葉寿司で知られる中谷本舗や洋菓子のモンテール、株式会社ロッテの「コアラのマーチ」といった食品関係など、非常に幅広いジャンルの商品・イベント・プロモーションにゴジラはひっぱりだこだ。

■さまざまなコラボ戦略の理由は?

コアラのマーチとのコラボ。

  この「コラボレーションするネタを選ばない」点が、ゴジラコラボの特徴でもある。『ゴジラ-1.0』の公式サイトにあるコラボレーション一覧を見るとわかりやすいが、この映画に関連したコラボでも関西学院大学の学園祭、始祖焼酎の「鍛高譚」、読売巨人軍、全国の公衆浴場(銭湯)、コアラマットレス、サカゼンと、非常に幅が広い。「来るもの拒まず」という雰囲気が漂っている。

コアラマットレスとのゴジラコラボ。ゴジラが踏んでもワイングラスは倒れない、というイメージ。

  ゴジラというキャラクターの知名度を活かし、大量のコラボレーションをするというビジネスモデルは、『シン・ゴジラ』でも試みられた。2016年7月の公開と前後して、福岡タワー、西川リビング、ロッテリア、ビッグボーイ、au、新星堂、タワーレコード、パルコ、あんみつ雨戸、ビームスなど、多数の企業とゴジラのコラボが立て続けに発表されたのである。ゴジラシリーズにおいて「他社とのコラボによって知名度と収益を得る」というビジネスが改めて本格化したのは、この『シン・ゴジラ』からではないだろうか。

  ゴジラの国産映画作品は、2004年公開の『ゴジラ FINAL WARS』をもってミレニアムシリーズが終結したことにより、10年以上の休眠期間に入ることになる。その3年後に公開されたのが、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』である。のちに『シン・ゴジラ』を手がける庵野秀明が総監督を務めた作品だ。この新劇場版エヴァンゲリオンの公開前、2004年から発表されたのが、パチンコ機の「CR新世紀エヴァンゲリオン」シリーズである。

  CR新世紀エヴァンゲリオンシリーズは2023年にも新作が発表されるなど、20年近くにわたって発売が続くロングセラーとなった。このパチンコに代表される、対象を選ばないタイアップ、コラボレーションが激化したのが、新劇場版以降のエヴァシリーズの特徴でもある。90年代の一大ブームから一定の時間が経過し、放送当初の刺々しいムードが薄くなった結果、エヴァンゲリオンは国民的キャラクターとして高い知名度を得ていた。その知名度を活かした幅広いコラボレーションは、自主制作という形で作られた新劇場版シリーズの制作費を確保する上で、大きな助けになったはずである。

『シン・ゴジラ』の公開を記念したアクションフィギュア。GODZILLA and the character design are trademarks of Toho Co., Ltd. ©1954, 1989, 2016 Toho Co., Ltd. All Rights Reserved. TM & ©TOHO CO., LTD. ©カラーュア『S.H.MonsterArtsゴジラ(2016)』シン・ゴジラの雛形を手掛けた竹谷隆之氏を筆頭に原型制作、尻尾を含め全長約40cmの最大級のボリューム。

  近年のゴジラシリーズの多種多様なコラボレーションは、このエヴァンゲリオン新劇場版シリーズで試みられた方法論が、『シン・ゴジラ』以降持ち込まれたものではないだろうか。監督である庵野秀明側から提案されたものか、それともゴジラシリーズを製作・配給する東宝側から提案されたものかはわからないが、「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」という形でエヴァもゴジラも同じフランチャイズに組み込まれている現在、両作品がプロモーション方法に関して相互に影響を与えあっている可能性は充分に考えられる。

  生誕70年を迎えたゴジラは、すでに三世代にまたがって知名度を持つキャラクターとなっている。しかし映画の製作ペースは数年おきであり、さらにシリーズとシリーズの間には10年以上のブランクが空くこともしばしばだ。10年の間新作が作られなくては、その間に「生まれてから一度もゴジラを映画館で見たことのない世代」が生まれることになる。そのキャラクターに馴染みのない世代が生まれるということは、長寿キャラクターであればあるほど、時間経過とともに致命的なウィークポイントになる可能性がある。ゴジラは圧倒的知名度を持つキャラクターではあるが、その知名度は常に「忘れられる危険」と隣り合わせなのである。

  特に『シン・ゴジラ』は10年以上の空白期間を経た後の作品であったこともあり、エヴァンゲリオンシリーズに倣ったなりふり構わないタイアップ・コラボレーションは、プロモーションのためには必須だったのではないだろうか。「作品の存在を広く知ってもらう」という一点のために、ありとあらゆる手段を取る。人気キャラクターであることにあぐらをかかず、取れる手段は全て取るという姿勢は、近年のゴジラの好調ぶりに一役買っているはずだ。

 今後70年を超えてゴジラシリーズが作られ、国民的キャラクターであり続けるためには、ネタを選ばないコラボレーションは必須と言えるだろう。逆に言えば、ゴジラがさまざまなコラボをやっているうちは、コンテンツとして攻める姿勢が貫かれているということかもしれない。個性的なコラボは、ゴジラの調子を測るためのバロメーターといえるのであろう。

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