佐久間宣行が注目する若手作家・小原晩対談 話題作『これが生活なのかしらん』と「創作」について

■我慢できないことは全て話すことの大切さ

最初は緊張をしていた小原晩も佐久間とのトークによって徐々に会話が弾み和やかな雰囲気で対談が行われた

小原:番組づくりは、チームでの共同作業ですよね。私はそれがとても苦手なんです。今回、はじめて商業出版するにあたって、編集さんや装丁家さん、営業さんなどといろんな話をしたんです。そこでそれぞれの意見がとびかったときに、うまく立ち回れなくて。我を主張しすぎて迷惑かけた気がするな、という反省と、だけど自分の名前で出す本なのだから、後悔しないように言うべきことは言いたいなという気持ちがあって、そのバランスをどうとればいいのかが今後の課題なんです。

佐久間:僕の経験上、我慢できないことはいったん、全部口に出すことから始めるといいと思いますよ。そのうえで話し合いを重ねるうちに、現実的に可能かどうかのラインがなんとなく見えてくる。あるいは、こういう言い方をすれば耳を傾けてもらいやすい、信用してもらえる、ということもだんだんとわかってくる。その積み重ねで、ちょうどいいバランスを探っていくのがいいんじゃないかなあ。

小原:全部、言っていいんですか。

佐久間:最初に我慢をしてしまうと、かえって気苦労が増えたり、主張するのに慣れなくて必要以上にきつい物言いになってしまったりしますからね。あと、僕も本を出すときに、出版社側に任せていたらいろいろ勝手に進んでしまって、あとから希望を通そうとしてもなかなか難しくて大変だった、という経験があります。後出しでもめるくらいなら、最初に「言いたいことがあります」というスタンスを見せておいたほうがいい。面倒くさい奴だなと思われるかもしれないけれど、バランスのとりかたはあとから学べばいいと思います。

■30歳になって気づいたこと

――それはもう、経験を重ねていくしかないことですね。

佐久間:だと思います。自分の言葉がどんなふうに相手に響くのかも、試してみなくちゃわかりませんしね。実をいうと僕も、たいていの人に怒っていると思われているらしいと気づいたのは30歳くらいのときでした。わりと穏やかな性格だと思うし、あたりがきついつもりもなかったんだけど、声が大きくて身長も180cm以上あるものだから、普通に話しているだけで威圧感を与えてしまうらしいんですよ(笑)。意識的ににこやかにしていなくちゃいけないんだな、というのは、コミュニケーションの経験を重ねないとわからなかった。

小原:ありがとうございます。ものすごく勉強になりました。本も丁寧に読んでいただいて、今日は本当にうれしかったです。またご一緒できるように、頑張ります。

佐久間:僕の方こそ、ありがとうございました。次回作を読める日を楽しみにしています。

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