『ドラえもん』大山のぶ代さんの声が心に染みる……もう一度聴きたい“名ゼリフ”を考える
2024年9月、ドラえもんの声を1979年から2005年まで約26年間にわたり担当した声優・大山のぶ代さんが亡くなった。水田わさびさんが作り上げた2代目ドラえもんも、もちろん素晴らしいが、昭和から平成初期にアニメ『ドラえもん』を観ていた世代にとって、大山さんが演じるドラえもんは特別な存在だ。本稿では、そんなドラえもんの名ゼリフをピックアップ。大山のぶ代さんの声でぜひ脳内再生して、あの頃の気分を味わってほしい。
「しょうがないなあ、のび太くんは」
『ドラえもん』の魅力といえば、やはり四次元ポケットから繰り出されるひみつ道具だ。タケコプターにどこでもドア、テレビとりもちに暗記パン……のび太のあらゆる希望を叶えてくれる道具の数々に、一度は羨ましさを感じたことのある人が多いはずだ。
そんなひみつ道具が登場する前に、よくドラえもんが言うセリフが「しょうがないなあ、のび太くんは」だ。のび太がジャイアンやスネ夫にひどい目に遭わされた時、ママから怒られそう、テストで赤点を取ってしまいそう、そんなあらゆる困ったシチュエーションに陥った彼が助けを求めてきた時、「しょうがないな、のび太くんは」と若干もったいぶりながらも、悩み事を解決できそうな道具を出してくれるドラえもん。言葉としてはありふれたものだが、ドラえもんの面倒見のよさ、のび太との関係性がよく伝わってくるセリフだ。
印象的なセリフは他にも数多く存在するが、のび太との日常とセットになっている「しょうがないなぁ」の一言は、また大山さんの声で聴いてみたいセリフの代表的存在ではないだろうか。
「大人ってかわいそうだね」
日常的なセリフから離れてもう1つ取り上げたいのは、のび太のおばあちゃんが登場する希少なエピソードの1つ「パパもあまえんぼう」でドラえもんが放つ「大人ってかわいそうだね」の一言だ。
これは、ある夜酔っ払ったのび助(のび太の父)が玄関先で大騒ぎし、それを見たのび太がパパのママに当たるおばあちゃんに叱ってもらおうと彼をタイムマシンで過去に連れていくというエピソード。最初は、おばあちゃんが話しかけても酔っ払った勢いで威張り散らしていたパパが、最後は泣きながら甘える様子に衝撃を覚えるのび太。これまで見たことのない父親の姿に驚くのび太に対し、ドラえもんはラストの2人の会話の中で「大人ってかわいそうだね」と言う。
のび太が「どうして?」と質問すると、ドラえもんは「だって辛いことや悲しいことがあっても寄りかかって甘えたり、叱ってくれる人がいないんだもの」と自身の見解を述べる。それに対しのび太は「そうか、自分より大きなものがいないんだね」と理解を示すのだった。多くの子どもが観るアニメの中で、どんな問題でも解決してくれるドラえもんが放ったからこそ、インパクトのあるセリフになっている。