『HUNTER×HUNTER』最新38巻発売 長期休載&複雑な展開でリタイアした読者も手に取るべき理由

 「週刊少年ジャンプ」45号(10月7日発売)で連載が再開される人気漫画『HUNTER×HUNTER』の最新刊となる38巻が9月4日、発売された。もともと全巻揃えていなくても、物語がまた動き出すことを喜びつつ、直近の展開を復習しておこうと手に取るファンは多いだろう。

 一方でSNSを見ると、好きな作品だったがリタイアしてしまったという“元読者”も散見される。長期の休載で物語のつながりが把握しづらくなっているほか、多くの陣営の利害が複雑に絡み合う展開、大量の新キャラクターに、“絵がついた小説”と表現するファンも出てくるほどのテキストの量……と、特に現在進行形の「カキン王国王位継承戦」はついていけなくなる要素が多く、物語を追うことを諦めてしまった人がいるのも無理はない。

 しかし、本作に熱中した時期がある人なら最新刊を読むべき理由がある。それは、作品の初期から鮮烈な印象を残してきた「幻影旅団」の原点となるエピソードが収録されているからだ。

 幻影旅団とは、本作に登場する“盗賊集団”の名称だ。メインキャラクターのひとりであるクラピカの同胞(クルタ族)を虐殺した、無慈悲かつ超凄腕の犯罪集団として一貫して存在感があり、団長のクロロはカリスマ性があり、アザーサイドの主人公と言えるようなキャラクターだ。広く語られる“巨悪”というイメージとは裏腹に、団員たちには意外な人間らしさを感じさせるエピソードも多く、クセのあるメインキャラクターたちと比較しても高い良識を持っているように見える場面もあった。

 隠語のように「クモ」と呼称されるのは、団長をアタマとして、蜘蛛の足の本数=12のメンバーで構成されるため。「この世の何を捨てても許される場所」として知られる政治的空白地帯・流星街で結成され、当初のメンバーは9人だ。彼らはどんなきっかけで、何を目的に活動を始めたのかーーその出発点にあった“事件”と、団員たちの本来の姿。カキン王国の王位をめぐる前後のエピソードはよくわからなくても、初期のファンならある意味で“スピンオフ”としても楽しめる過去編だ。

 注意が必要なのは、ジャンプの想定読者である少年・少女にとってはトラウマになりかねない、凄惨なエピソードが含まれるということだ。具体的なネタバレは避けるが、同時に幻影旅団の固い結束に説得力が生まれ、クロロのカリスマ性にも納得がいく内容でもある。まだ全てが明らかになったわけではなく、今後「過去編の続編」が描かれることに期待が高まる。

 作者の冨樫義博氏は、現在Xで制作状況を細かく伝えている。腰の持病と闘いながら、原稿を仕上げていく過程がポストされており、無理はしないでほしいと願いつつも、物語の続きを望んでしまうのがファンの心理というもの。直近の症状の悪化についても、「温かい励ましやお気遣いの言葉、気持ちから力をいただきました。ありがとうございます」とポストしている冨樫氏に、あらためて応援の気持ちを届けたいところだ。

 

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