【漫画】“変わり者”の女子高生、不登校のクラスメイトとコスプレして学校へ? 繊細で痛快なSNS漫画に脚光

「自分が抱えている願望を忠実に漫画にしよう」

――なぜ『不登校の子とコスプレして学校行く』を制作したのですか?

さんけ:「直近の『コミティア』で創作漫画を販売しよう」と思って描き始めました。商業作品ではないので自由にやれる分、「とにかく自分が抱えている願望を忠実に漫画にしよう」と思いました。

――内に秘めた願望から方向性を決めていったのですね。

さんけ:はい。最初は「引きこもっている自分を外に引っ張り出してくれる友達や理解者がほしい」という願望が着想になったと思います。ただ、さすがに社会人が外に出るだけでは面白くないため、不登校の生徒やコスプレといった要素を足してストーリーを仕上げていきました。

――英奈、保坂の性格やビジュアルの決め方は?

さんけ:まず逸見英奈は学生時代に仲の良かった友人をモデルにしています。その人は当時そこまで一般的ではなかったメッシュやインナーカラーをよく変えている子でした。また、サークルの部長にだけ伝え、他には誰にも告げずに気付いたら退学しているような自由奔放な変わった人でした。退学することを教えてくれなかったのは、そこまで仲良しと思われていなかっただけかもしれませんが……。

――一方、保坂は?

さんけ:保坂の性格に関してはかなり自分の影響が強いです。ビジュアルに関しては、「目つきと口の悪いメイドさんを描きたかった」ということが影響しています。

――保坂のメイド服、英奈の軍服は、黒と白が基調となったシックさと可愛らしさが合わさった衣装でした。コスプレ衣装も何かモデルがあったのですか?

さんけ:もともとイラストレーターをやっていたこともあり、そういったフィクション要素のある衣装を描く機会も少なくなかったです。その時の知識やかき集めた資料をベースに衣装を描きました。

――保坂の思春期特有の「“普通”でいたくない」という心理がとても丁寧に描かれていました。

さんけ:これを言うと嫌われそうですが、自分は“特別”で他の人は“普通”と思ってしまう時があります。そういった自分の心理状態を嘘なく、忠実にそのまま描くことを意識しました。

――保坂の心理状態に自身の気持ちを反映させたと。

さんけ:そうです。とはいえ、恋人や結婚、友人に囲まれるような普通の幸せな生活を送っている人達が羨ましかったため、そう思っていた部分があります。ある時、みんなを“普通”と下に見て、「自分は特別だからそんなことには興味ない」という惨めな嫉妬に“特別”という言葉でメンタルを守っていたことに気付きました。そこで“思春期の承認欲求”というところに、その嫉妬心を落とし込みました。

「おまけ」を追加した背景

――英奈が保坂を肯定しながら諭すシーンが素敵でした。

さんけ:英奈にとっての“特別”とは「普通を求められてるところで変なことをする」ということで、保坂は自分と他者を区別するために“特別”という言葉をそれぞれ使っています。そのため、お互い噛み合っておらず「キモい説教すんな」と一蹴されてしまうのですが、ただ2人とも「みんなと違うことがしたい」「誰かと一緒のことをしたら自分が消えてしまう」という感覚が根底にあります。そこからお互いに共感し合えるセリフ、理解者を見つけられた時のあえて表に出すのは恥ずかしいけどちょっと嬉しそうにする表情を考え、このシーンを描きました。

――英奈がスマホのカメラを保坂に向けたり外したりなどして、「スマホの中(配信)は保坂の居場所·世界としては狭すぎる」ということを伝えるシーンも洒落ていました。

さんけ:自分の友達は自分とは逆でSNSをやっている人が少なく、「画面越しではなく、キチンと現実を見ることができて羨ましいな~」と思う時があり、そういう画面からの解放という意図もあります。自分は「あ、これ投稿したらバズりそう」とか、そんなフィルターを通してものを見がちなので。

――ラストの「おまけ」まで楽しめる内容で、「行った」というシンプルなオチも面白かったです。

さんけ:「おまけ」は単純にオチや満足感が弱く感じたので追加しました。オチをシンプルにした理由は、ここまでセリフ量が多く、結構カロリー高めな内容だったので、最後はフッと笑えるものにしたかったからです。

――今後はどのように漫画を制作していきたいですか?

さんけ:まずは本作も含むコミティア用の創作本の完成と、それを完売できるように頑張りたいです!

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