アニメ化で話題 戦隊ヒーロー×異世界転生『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』で反照した“赤“の重要性

 どうして赤なのかには諸説あって、子供が好きな色だからとか、カラー放送で目立つからといった理由が挙がるが、『ゴレンジャー』以前は決して定番ではなかった。『ウルトラマン』(1966年)は銀色で『仮面ライダー』(1971年)は黒かった。一方で、『ウルトラセブン』(1967年)や『スーパーロボット レッドバロン』(1973年)のように赤いヒーローも存在した。

 『ゴレンジャー』より1年早く始まった、同じ石ノ森章太郎原作の『がんばれ!!ロボコン』のロボコンも赤いボディを持っていた。石ノ森作品では、1964年から連載が始まった漫画『サイボーグ009』の主人公たちも赤いスーツを着ていた。劇場公開された最初のアニメ『サイボーグ009』(1966年)では009だけスーツが白に変えられた代わりに赤いマフラーをなびかせていた。これは同じ石ノ森ヒーローの仮面ライダー1号にも受け継がれた。

 赤は強い。赤は正しい。ロボコンはおっちょこちょいだが正しくあろうとしている点はヒーローたちと同じだ。そうした背景もあって、『ゴレンジャー』で赤がリーダー格の色となり、半世紀にわたって受け継がれてきたイメージについて、異世界の視点から今一度問い直してみたのが『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』という作品だ。そして同時に、改めてレッドこそが最強で最高のヒーローなのだということ、今一度示そうとした作品なのだ。

 その上で、繰り広げられる冒険と戦いのストーリーでもしっかりと読む人を引きつけて離さない。どこからともなく不思議なアイテムを取り出して空を飛び、敵を斬り裂き、果ては巨大ロボットまで呼び出して戦う“戦隊ヒーローあるある”ぶりに、イドラが驚き敵も慌てる様を見せ、戦隊ヒーロー好きをニヤニヤとさせ続ける。そうした技や武器の使用に当たって、「絆」というものを必要とすることで、キャラクターたちの関係性に意味を持たせている。

 灯悟とイドラのコンビに、アヴァルロスト皇国の第三王女で国を蝕む謎の魔道具“魔力の種”の撲滅に挑むテルティナと、彼女の従者でテルティナに異常なまでの忠誠を誓う勇者ロゥジーも加わったパーティーは、行く先々で圧政を続ける領主や魔王の復活を目論む魔王族と出会い、戦いとなる。イドラたちを呆然とさせた戦隊レッドの異世界パワーも届かない強さを持つ敵に、正義の心だけでは負けそうになることもある。

 そんな時、灯悟を毛嫌いするロゥジーが協力し、絆の力を高めて突破していくような展開から、信じる心の大切さを感じ取ることができる。絆を深め、キズナレッドが持つ力を潜在的なものも含めて絞り出しながらエスカレートしていく戦いを乗り越え、冒険を続ける楽しさを味わえる。

 その過程でまだまだ驚きの現象が起こりそう。重要となるのが、異世界に転生したのはレッドだけではないかもしれないということだ。これは灯悟の仲間にも当てはまり、そして敵だった絶縁王と秘密結社・ゼツエンダーのメンバーにも言える。戦隊レッドがたった1人で異世界の常識を粉砕するなら、戦隊ヒーローの味方も敵もそろって現れたら一体何が起こるのか? そんな興味を抱かせながら原作は連載が進み、単行本も8月9日に最新の7巻が発売された。

 読めばその破天荒な世界観を先取りできるが、映像と音声で楽しめるTVアニメの放送を待つのもひとつの手。数々のスーパー戦隊シリーズでスーツアクターを務め、モーションキャプチャアクターとしても活躍してきた小川晃輝が変身モーション監修を担当。特撮ヒーロー作品の監督を務めた鈴村展弘が変身モーションディレクターを担当するなど、特撮の技と知識がアニメに取り入れられるからだ。

 漫画でも迫力のシーンがアニメではどう描かれるのか? 今から楽しみで仕方がない。変身時の爆発も、これはら屋敷が壊れて敵も吹き飛ばされて当然の迫力を持ったものとなるはずだ。

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