【漫画】学校に行けなくなった教師、不登校の生徒に慰められて……リズミカルな会話も面白い読切漫画に反響
――本作に多くのいいねが集まっていますが、これについていかがですか。
星川ちづる(以下、星川):自分の漫画にたくさんの方から反響をいただくことが初めてだったので、驚きつつも感謝の気持ちでいっぱいです。
本作は数年前に雑誌掲載した作品でした。今回は連載中の『地底界奇談』第1巻が出版されたため、その宣伝としてSNSで掲載しました。
雑誌と異なり読者層が限定されないことが、反響の理由のひとつかなと思います。
――ご自身の高校を中退した時の不安や焦燥感を昇華させた作品ということですが、それを生徒と先生という間柄に落とし込んだのはなぜでしょう?
星川:学生の時、教師と生徒の関係性について面白いと感じていたことの一つに、学校では教師と生徒という立場で話すけれども、それ以外の場所で会うと違った一面が見えることでした。今作では先生の“ひとりの人間”としての本音を書くことが楽しかったのではないかと思います。
――未来に対する不安や焦燥感を持っている人は多いと思いますが、そういった人にアドバイスをするとしたら?
星川:本作に目を留めてくださった方は、既に真剣に問題と向き合っているのではないかと感じます。簡単に解決できる問題ではないことも多いので、そういった方々に蓋然的にアドバイスをすることは本当に難しいです……。ただ、皆さんの悩みが少しでも良い方向に進むといいなと祈っています。
――主人公の教師は自分自身を投影しているのでしょうか。また木原のモデルはご友人だそうですが、思い出などもあれば。
星川:高校を中退した後に感じた、社会の輪の外に出てしまった不安感などが、休職中の教師のキャラクターに表れていると思います。木原のモデルになった友人は、物静かですが周りから一目置かれる子でした。
高校時代の冬頃、ふたりで年を越しました。「一緒に年越ししよう」と誘った時は「……別に良いけど」とそっけない感じでしたが、実際に友人の家に行くと、年越し蕎麦を作って待ってくれていて。その子の気配りや優しさに、胸を打たれました。
――セリフ回しもリズミカルだなと感じました。
星川:私の制作には、ストーリーの流れから入るものとキャラクターの会話から入るものがあります。本作はセリフの掛け合いから作ったのでリズム感ができているのかなと思います。
――ファッションなども含め、絵柄も素敵です。どういう意識で描いていますか。参考にしている服などもあるのでしょうか。
星川:お恥ずかしながら、あまり詳しくありません。ただ永野護先生や楠本まき先生の描かれるファッションやデザインは素敵だなと思います。
――現在連載中の『地底界奇談』はどんな作品ですか。
星川:初連載だったので不安や緊張のなか手探りで描いていますが、沢山のことを学ばせていただいています。あとは『AM10:30』が多くの方の目に留めていただいて、悩んでいるのは私だけではないと感じました。
私は読んでくださる皆様も自分自身も希望を持てるような漫画が描きたいです。『地底界奇談』は暗い展開が続いていますが、これから地底の暗い闇に希望の光を差せるように、必ず良いものにしたいです。最後までお付き合いいただけますと幸いです。
――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか?
星川:憧れているのは富野由悠季監督や高畑勲監督、幸村誠先生。影響を受けた作品は『ふたつのスピカ』と『学園アリス』、影響を受けた作家様はリドリースコット監督などです。
――作家としての展望、なりたい作家像を教えてください。
星川:たくさんの方に支えていただいているお陰で、作品を描くことができていると実感しています。周りの方に感謝して、必ず意味のあるものを作っていきたいです。まだまだ未熟ですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。