『呪術廻戦』五条悟や宿儺にも勝てる?  髙羽史彦が“作中最強キャラ”と呼ばれる理由

ギャグマンガとお笑いへの愛が生んだ規格外の能力者

 髙羽の術式は、“面白い方が強い”というルールを強制する能力であり、いわば現実を“ギャグ時空”に塗り替える禁じ手。『ワンパンマン』のサイタマや『とっても! ラッキーマン』のラッキーマンのように、通常のバトルマンガのルールから逸脱する規格外の能力者だ。その支配力が例外なく発揮されるのだとすれば、理論上は両面宿儺や五条悟であっても、髙羽を追い詰めることは難しいだろう。

 唯一の弱点は、「超人」の発動条件が芸人としての自信に基づいていること。「自分は面白くないのかもしれない」と髙羽の気持ちが揺らぐことで能力が弱体化するので、たまたまお笑いに詳しく、即興ギャグのセンスをもつ羂索は天敵だと言える。もし羂索がいる岩手ではなく、新宿で宿儺と戦ったとしたら、まさかの大金星が実現していたかもしれない……。

  ところで、なぜそこまでお笑いを扱う術式が強力なものとして描かれているのだろうか。その理由は、作者の芥見がお笑い好きであることと無関係ではないはず。お笑いが持つ力を心から信じているからこそ、その価値観を写し取った“最強のお笑い芸人”が完成したのだと考えられる。

  髙羽の戦闘描写には、お笑い知識がこれでもかと活用されており、売れない芸人の心理をリアリティたっぷりに描き出すことにもつながっている。ちなみに髙羽は『笑う犬』世代でセンターマンの格好をしているが、芥見自身は『あらびき団』世代であることを『漫道コバヤシ』(CSフジテレビONE)に出演した際に語っていた。

  また芥見は『週刊少年ジャンプ』(集英社)が生んだギャグマンガの金字塔『ボボボーボ・ボーボボ』の大ファンとしても有名で、髙羽と羂索の戦闘を描いた一連のエピソードは、アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』の主題歌『バカサバイバー』にちなんだサブタイトルが付けられている。また27巻の表紙でも、髙羽が『ボボボーボ・ボーボボ』の第1巻をオマージュしたポーズをとっており、その影響力の大きさを感じさせる。

  ある意味、髙羽は芥見の作家性がもっとも爆発したキャラクターなのかもしれない。その活躍が今後アニメで描かれる日が来ることも楽しみだ。

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