『寄生獣』に負けない傑作と話題 実写ドラマ配信が迫る岩明均原作漫画『七夕の国』の見どころは?

七夕の国 全4巻完結(BIG SPIRITS COMICS SPECIAL) [マーケットプレイス コミックセット]

  7月4日より、Disney+(ディズニープラス)にてオリジナルドラマシリーズ『七夕の国』の配信が始まる。同ドラマは、人気漫画家・岩明均による同名マンガを原作とした実写化作品だ。

  岩明の代表作として知られる『寄生獣』は、累計発行部数2,500万部を突破したマンガ史の金字塔であり、アニメ化や実写化などのメディアミックスも行われてきた。それに比べると、『七夕の国』の方はややマニア向けの人気作であり、もしかすると作品の存在自体を知らなかったという人もいるかもしれない。しかし実際には『七夕の国』も『寄生獣』に匹敵するほど完成度の高い物語だと言える。  そもそも 『七夕の国』は岩明が『寄生獣』に続いて連載した作品で、1996年から1999年にかけて『ビッグコミックスピリッツ』にて掲載された。

  物語の主人公は南丸洋二、通称“ナン丸”と呼ばれる大学生。一見どこにでもいる平凡な男子に見えるが、「あらゆる物に小さな穴を空ける」というささやかな超能力を持っている。実をいうと彼は丸神家という超能力一族の末裔であり、その血筋が原因で思いもよらない運命に巻き込まれていくのだった。

  “丸い穴”があくという超能力のビジュアルだけでもどこか不気味だが、とくにインパクトが強いのが黒嶺郡丸川町、通称「丸神の里」にまつわる描写だ。おだやかな田舎町に見えるものの、そこに住んでいる人々は何かを隠しているような態度を取っている。そして丸神家の話題になった途端に急激に態度が変わり、山の頂上ではひそかに奇妙な儀式が行われている様子もある……。

  この町を訪れた丸神正美という大学教授が失踪するところから物語が動き出し、ナン丸や丸神教授の関係者たちが謎を追うなかで、次々と予想外の真実が明らかになっていく。ジャンルとしてはホラーとミステリーの中間にあたり、今風にいうと「因習村」的な設定とも言えるだろう。

  ほかにも、季節外れの時期に開かれる七夕祭り、東北にいないはずのカササギをモチーフにした旗、謎めいた「窓をひらいた者」「手がとどく者」の存在など、丸神の里には数多くの秘密が隠されている。この謎を紐解いていく作者の手腕があまりに巧みなことが、『七夕の国』の大きな見どころと言えるだろう。たった4巻でスピーディーに伏線が回収されていく様は、まさに圧巻だ。

  また、主人公の成長物語としても上手く作られていて、最初は将来のことを考えずに日々を浪費するだけのボンクラだったナン丸は、やがて自分の生き方と向き合い、“やるべきこと”を見つけていく。数千年規模の壮大なスケールのファンタジーと、地に足のついたリアルな青春を両立させているため、多くの人が共感しながら楽しめるはずだ。

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