【webtoon試し読み】『先輩はおとこのこ』テレビアニメの解像度が爆上がり? LINEマンガで連載中の前日譚「出会い編」が切ない

 「LINEマンガ インディーズ」への投稿から本連載まで駆け上がり、7月4日(木)からはフジテレビ“ノイタミナ”ほかにてテレビアニメの放送が決定しているwebtoon『先輩はおとこのこ』(ぽむ)。世界でも配信中の人気作だが、現在、LINEマンガで同作の前日譚となる「出会い編」(101話~)が連載中だ。こちらも併せて楽しむことで、アニメを観る際にもエピソードの解像度が上がり、切なさと感動が倍増するだろう。

 『先輩はおとこのこ』には愛すべき3人の“主人公”がいる。物語の中心になるのは、幼い頃からかわいいものが好きで、セーラー服にウィッグ着用で高校に通う“男の娘”=花岡まこと。さらに、まことを女子だと思って告白し、男子だとわかったあとも追いかけてくる後輩女子・蒼井咲。そして、常にまことを見守りながら秘めた思いと共に日々を送ってきた幼馴染の大我竜二(りゅーじ)ーーそれぞれに悩みや葛藤を抱えながら、二度と戻らない日々を精一杯に生きる姿に胸を打たれる作品だ。そのなかで、本編(~100話)終了に至るまで、ファンが最も掘り下げてほしいと期待したキャラクターが「りゅーじ」だと言えるだろう。

 りゅーじは表面的にはガサツにも見えて、実際は人の気持ちに配慮できる、快活で優しい人物だ。正解の出ない思いに葛藤を抱えながら、好奇の目を向けられがちなまことをさりげなく守ってきたヒーロー。りゅーじの存在がなければ、まことの学生生活はまったく違ったものになったに違いない。まことが“男の娘”になった経緯とともに、りゅーじが元々どんな少年で、2人が悩ましくもあたたかい関係をどう育んできたかが、中学生時代を描く「出会い編」で明らかになる。

 あらすじだけを見ていくと重たい作品にも思えてしまうが、作者のぽむ氏は例えば「多様性」についての強いメッセージを意図して発することなく、美麗な作画もあって、瑞々しい青春ドラマとして楽しむことができる。キャラクターがデフォルメされた日常のシーンには笑わされることが多く、そのなかに切実な痛みを感じるのが、本作の特徴だ。高校時代から中学時代にさかのぼった「出会い編」はなおさら、微笑ましいシーンも、失敗して傷つけ、傷つくシーンも含めて、その未熟さ·純粋さが愛おしくなる。彼らより大人な読者は、時に彼らの物語を歯痒く思いながら、それでも「間違っていないよ」と言ってあげたくなるのではないか。

 縦読み&フルカラーの「webtoon」は現在のトレンドで、制作スタジオの設立や人気作のメディアミックスというニュースが連日届いている状況だ。話題作の多くはwebtoonと相性のいい刺激的なアクション作品、あるいはフックのあるラブファンタジー、カタルシスのある復讐(リベンジ)系作品など派手なタイトルで、『先輩はおとこのこ』のような繊細なドラマはまだ珍しい。新世代のヒットメーカーとして、いまから注目しておくと今後の楽しみが広がりそうだ。

 原作はアニメ鑑賞後の楽しみにとっておきたい、という人は101話から始まる「出会い編」から楽しむのもいいだろう。明るい未来が訪れてほしいと願わずにいられない彼ら/彼女らの物語を、ぜひ見守ってもらいたい。

『先輩はおとこのこ』
作品URL:https://lin.ee/jJLhqYN/pnjo
コピーライト:©pom/LINE Digital Frontier

テレビアニメ『先輩はおとこのこ』
公式サイト:https://senpaiha-otokonoko.com/

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