「声優アニメディア」休刊に寄せて 2004年の創刊から変化した、声優雑誌の役割と課題

 一般社団法人日本雑誌協会が発表している印刷証明付部数で、「声優グランプリ」は2024年1月~3月の集計が1万7677部となっている。直前の2023年10月~12月が1万2954部だから、年明けに回復したといえるが、3万部近くあったピーク時より減っていることは確かだ。季刊化された「声優アニメディア」と違い月刊誌を維持しているため、新作アニメの情報やイベントリポートも発信できる強みもある。

 ただ、情報の鮮度ならネットメディアには及ばない。その分を声優グラビアのような付加価値で引っ張る雑誌メディアを有り難がる意識が、ネットで見られれば十分といった意識にとって代わられた時、「声優アニメディア」に限らず雑誌メディアは命脈を絶たれる。それは新聞も同様だが、専門性の高い情報なり、遠くにいては知ることができない市井の情報なりを伝えたいというメディア側の思いがあり、読者の側の知りたいという願いがあれば、新聞も存在を維持していける。

 同じように声優雑誌も、推し声優がスタイリストのコーディネイトで美しく整えられた姿で登場するグラビアなり、熱く支持している声優の連載があれば、手に取る価値があると思ってくれる人がいるかもしれない。

 ネットメディアでは、知名度のある人物やバリューのある事象の記事は読まれるが、これから伸びていくだろう新鋭が割って入ることは難しい。雑誌ならそうした将来有望な声優にページを割いて紹介して推していける。広い間口を通して大勢を送り出し、声優の世界を豊かなものにしていけるのだ。

 それを編集側が役割として意識し、読者の方もそこに価値を見出すことによって声優雑誌が雑誌として続いていく可能性も見える。掲載されたグラビアや連載をフォトブックなり単行本としてまとめて刊行するための“苗床”としての機能もある。「月刊アニメディア」のような親媒体を持たない「声優グランプリ」ならなおのこと、雑誌として存在する意味がある。そういった理由から、しばらくは続いてくれるものと思いたい。

 本来は声や演技で勝負するはずの声優に、グラビア映えのようなものを求める点がルッキズムとして捉えられる可能性も皆無ではない。そうした風潮を声優雑誌が助長しているとしたら、これからの時代にそぐわないといった声を浴びることもあるだろう。受け止めるファンも、起用するアニメ業界も、紹介するアニメメディアも対応を考えていく必要がある。

 一方で、アイドルとは一線を画されていた声優にスポットを当て、プロのカメラマンとスタイリストを使い、最高のロケーションで極限まで魅力を引き出そうとした声優雑誌の功績は評価されるべきだ。そこの部分はしっかりと維持しつつ、変わる時代の中で求められる声優像をどのように提示していけるかが、声優雑誌の将来にとって大切なことかもしれない。

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