角野栄子×原ゆたか「角野栄子あたらしい童話大賞」イベントレポ 物語の創作を志す人に向けて

二人から応募者に向けたエール

あたらしい童話大賞のパネルとかいけつゾロリの人気キャラクターの前で

角野:読み聞かせというのは、読んだ人の波動みたいなものが伝わる楽しみがあると思うんだけど、ひとり読みは、自分の声を聞きながら物語を体のなかに取り入れていく、全身で味わう行為だと思うんですよ。だからこそ、私はコツコツ、毎日書くことをおすすめします。私も、外国を旅している間なんかは書くことから離れちゃって、帰宅したときに「こんなに書けない人だったかしら」ってびっくりすることがある。書くっていうこともまた、体全体を使ってすることなのよ。頭で考えているだけでは、だめなの。

原:僕は、一冊書き上げるとしばらくは書きたくなくなっちゃう。書きたい気持ちになるまで、映画や芝居やドラマを見て刺激を受けたり、物語の種を探しますね。しばらくちゃんとした文章を書くことから離れるせいなのか、毎回書き始めるときは「どうやって書くんだっけ!?」という気もちになります。(笑)でも、僕も文章自体は書いていないとしても、頭の中ではいつも次の作品を考えているし、やっぱり続けていくには書き続けないとね。

角野:そして続けるためには、読者に支えてもらわなければ。子どもたちにとって、初めて最後まで1冊の本を読み通すって、とても嬉しくて誇らしいことなんです。一度その喜びを知ったら、本が大好きになる。そして、読者が面白いと思って本を読み続けてくれたら、作家も読者から支えてもらえることになる。だからまずは、物語の最後まで連れていけるような作品を私は書きたいですし、読者としても出会いたい。この間、魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)でNHKの取材を受けていたとき、大人たちがせわしく行きかうなかで、一人の男の子があぐらをかいてずっと本を読んでいたの。一度も顔を上げないで、真剣に、ほっぺたを真っ赤にしてさ。そういう読書経験って、本当に素晴らしいと思うの。そういう子たちに面白かったって思ってもらえる作品を、ぜひ書いて応募してほしいですね。

「角野栄子あたらしい童話大賞」に応募してみよう!

「角野栄子あたらしい童話大賞」の締め切りは2024年5月31日(当日消印有効)。公式ホームページには、クリエイター応援コンテンツとして、角野栄子の創作10か条も掲載されている。原ゆたかが「自分の根っこもこれと同じ」と言った10か条を、本記事とともにぜひ創作の参考にしてほしい。

■「角野栄子あたらしい童話大賞」特設サイト
https://www.poplar.co.jp/award/kadonoeiko/

関連記事