【漫画】姉と比較され続ける“じゃない方”の妹……アイデンティティの確立を描く読切漫画がスゴい
――本作を投稿された経緯を教えてください。
夕海:これを描いたのは2020年の春くらいで結構前なんです。ちょうどヤングアニマルZEROで連載中の『ノラの家』の単行本も発売されたタイミングなので、宣伝も兼ねてXに投稿しました。
――アイデアはどのように?
夕海:連載には至りませんでしたが、以前に女の子が主役のスケートボード漫画を担当さんと構想していたんです。その企画のサブキャラクターが本作の主人公・信乃でした。もともと金髪のギャルっぽいキャラで、担当さんが「彼女のスピンオフを考えませんか?」という提案してくれたんですね。
そんな経緯で彼女がスケートボードを始めるまでを短編として描いたのが本作です。あと信乃がお姉ちゃんの模倣から逃れて自分を表現するシーンをラストにするのは、最初からイメージとしてありました。
――スケートボードをキーアイテムとして使ったのはなぜでしょう。
夕海:自分が当時ハマっていたのと、若者の青春漫画とスケボーの滑走やジャンプって相性がいいんですよ。感情の高ぶりと動きを合わせると絵になるので。あとは女の子のスケートボーダーもカッコいいじゃないですか。それが理由ですね。
――親と姉にコンプレックスを持つ妹を主人公にした理由も知りたいです。
夕海:私にも妹がいるんですよ。彼女は今ファッション関係の仕事に就いていて、今の連載ではキャラクターのコーディネートも担当してもらっています。資料を調べるのにも時間がかかるので、センスのある人に任せた方がいいんですよ。
そんな彼女も昔、父がミュージシャンで母は元バレエダンサー、私は漫画家と芸術分野にいることに対して「みんな一芸に秀でているのに私は何もない」と言っていたんですよ。そんな妹がギャルだった時期があったことから着想したんです。この子を主人公にしたいなと。
――では登場する姉・紗季が夕海さん?
夕海:親と紗季が同じ業界で成功している、という状態にデフォルメしていますけどね(笑)。小さい時はよくケンカしましたが、基本はずっと仲良しでした。だから完全に自分の家族をモデルにしたわけではありません。
――アメリカの学園ドラマに通ずる物語ですよね。
夕海:そのエッセンスを日本を舞台にした漫画にしようと模索していました。自分のなかでは納得のいく形にできたと思っています。私自身も海外の青春作品が好きなんですよ。スケートボードを始めようと思ったのも映画『ロード・オブ・ドッグタウン』を観てからでした。ゆくゆくは自分の作品を映像化したい、という夢も持っています。
――影響を受けた作品や作家も教えてください。
夕海:そこまで漫画を読んでこなかったので、特にこの作品というものはないです。サブカルっぽい雰囲気の漫画が好きですね。ただ実際にアシスタントをさせていただいた鳥飼茜先生、浅野いにお先生のおふたりには多大な影響を受けている気がします。
――連載中の『ノラの家』についても教えてください。
夕海:シェアハウスに住む若者たちの群像劇で、何かしらの加害を犯した住人たちを1巻にひとりずつくらいのペースで過去を掘り下げる形で進めていますね。全員分のストーリーを掘り下げてから、それぞれが同居人とどう関わっていくのかというドラマを描いていきたいです。