全国博物館へのクリエイター派遣に賛否 地方学芸員「予算少なくほぼワンオペ、人手を増やしてくれたら」

■博物館は何のためにあるのか

 現に、鳥取県北栄町の「北栄みらい伝承館」では、既に収集していた資料と同等未満の資料は収集しないことを決め、民俗資料の4分の1を処分している。朝日新聞の報道によると、資料の整理が進まず、収蔵品の量が増えていたためという。処分といっても廃棄するのではなく、希望者を募って譲渡する形をとっただけマシだったと思うが、そのなかには貴重な資料も含まれていたのではないかと思うと、複雑な気持ちになってしまう。

 博物館はもちろん、人に来てもらうことは大事だ。筆者のようなライターも、そういった思いで告知記事などを執筆している。しかし、博物館でもっとも大事なことは、資料を整理し、保管し、後世に伝えることであろう。この大前提を忘れてはいけないのではないか。高額な美術品だけでなく、地元の歴史を語る農具なども大切な文化財なのだ。前出の学芸員は、こう話す。

 「とにかく、学芸員の人材育成の体制ができていません。資料の適正な管理の仕方などを知らないまま、地方で学芸員をやっている人もいて、これではせっかく寄贈された美術品や資料を劣化させてしまうことになりかねない。国や文化庁は表面的な活性化を目指すのではなく、現場の人の声を聞いてほしいと切に願います」

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