『小説 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 下』から読み取れる、ラクスの思いとアスランの破廉恥な妄想
設定面では、ファウンデーションを率いる女帝のアウラ・マハ・ハイバルの“正体”が詳しく書かれている。子供にしか見えないにも関わらず、宰相のオルフェからは母上と呼ばれるアウラには、キラやカガリの父親で研究者だったユーレン・ヒビキとライバル関係だった過去があった。それならば年齢も相当なはずなのに、どうして子供の姿なのかについて説明がある。その過去を知って、どうすれば国民を核の炎で焼き尽くすほどに歪まなかったのかも考えてみたくなる。
テクノロジーでは、クライマックスでキラと合流したラクスが見せる攻撃について背景が説明されている。キラが駆るフリーダムガンダムに迫るミサイル群を、「これは私が」と言ってラクスが迎撃したシーンでは、周囲の敵をラクスが一瞬で認識してロックし、その情報を元にディフェンダーという武装から発生していたナノ粒子に電磁波を走らせ、熱を生み出して攻撃に変えたことが分かる。
デスティニーガンダムを操るシンが、ファンデーションのブラックナイトスコード隊員を相手に“分身の術”を見せた際には、忍術のように残像を見せるのではなく、DUPE粒子が使われていたらしい。DUPE粒子が何かは依然謎めくが、何か裏付けのある技術が使われているのだろう。このほか、アスランがコックピットで破廉恥なことを考えていたジャスティスガンダムは、離れた場所にいるカガリが操っていたことが映画の中で描かれる。理論上はタイムラグが生じない共時性パリティ通信が使われていたらしいが、実践にはパイロット同士の深い信頼関係が必要らしい。
ファウンデーションに拉致されたラクスを取り戻しに行こうとせず、「僕じゃ駄目なんだ!」と叫ぶキラに、アスランは「くだらない泣き言はやめろ!」と言い、「『自分が』『自分が』ばっかりで、彼女の気持ちなんか、ひとつも考えてないだろう、おまえは!」と叱咤する。もっとも、後でメイリン・ホークから「人って『おまえが言うか』ってことを言いがちですよねぇ」と突っ込まれ、相手の気持ちに鈍感なのは自分も同じだと自省したところから、信頼関係の構築に邁進したのかもしれない。
もっとも、そこに浮かんだカガリへの破廉恥な妄想がどれだけの影響を与えたのか。カガリからの追求にアスランがどのような言い訳をしたのか。そこは小説版にも描かれていないだけに、妄想の余地がありそうだ。