『ONE PIECE』ついに五老星の正体判明で新たな謎ーーなぜ尾田栄一郎は“真逆の設定”を用意した?

なぜか頻出する“自由”を連想させるモチーフ

  さらに第1110話ではもう1つ気になる点が存在した。今回明かされた五老星の正体は、いずれも“家畜”をモチーフとしている節がある。どういうことかというと、「牛鬼」は牛、「以津真天」は鳥、「封豨」は豚、「馬骨」は馬と対応しており、「サンドワーム」からは蚕(カイコ)を連想することができるのだ。

  五老星といえば、世界政府の最高権力者として絶大な権力をもち、裏から世界を支配している存在。自由を追い求める海賊たちにとっては天敵にあたり、時には理不尽な暴力によって人々から自由を奪ってきた。

  他方で家畜とは人間のために飼い慣らされた生き物であり、ある意味では“自由を奪われたもの”ということになる。すなわち五老星と人間の関係とはまるで真逆だと言えるだろう。ここには明らかに矛盾が存在しているように思われる。

  また五老星の人間としての姿も、同様の矛盾をはらんでいる。ピーター聖は奴隷解放宣言を公布したエイブラハム・リンカーン、マーズ聖は自由民権運動を進めた板垣退助、ナス寿郎聖はインド独立の父として知られるマハトマ・ガンディー……といった具合に、自由と民主主義を体現する偉人たちが外見上のモデルとされているのだ。作中の五老星は人間の権利や尊厳を蹂躙し、自由に生きることを許さないキャラクターとして描かれているため、ここにも大きな矛盾がある。

  むしろこうした自由をめぐるモチーフは、自由の象徴であり、奴隷たちを救う存在として信仰された太陽の神・ニカにこそふさわしいはず。なぜここでニカと五老星の立ち位置が入れ替わっているのか……。この逆転こそが、今後の展開のカギとなってくるのかもしれない。

  あるいは五老星がひた隠しにしてきた「空白の100年」に、その秘密が隠されていると考えることもできるだろう。ニカと五老星が直接対峙することになった未来島エッグヘッドにて、世界の真実が解き明かされていくことを期待したい。

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