映画に続きドラマ版も好調の『沈黙の艦隊』 海江田四郎はなぜ乗組員と読者を魅了するのか

深町との対照的な描き方がお互いの存在を引き立たせる!

 海江田の同期でライバルの深町洋。海江田とは性格が正反対のため対照的なキャラとして描かれており、2人のやり取りや読み合いは目が離せないシーンとなっている。

 深町も十分な実力者で、艦長としての動きは非常に優秀だが、性格もやり方もかなり荒っぽい。原作では口の悪さが目立ち、現代にはきっとそぐわないであろう発言もいくつか見られた。(まぁそこも彼の良さなのだが、実写版では荒々しいセリフが見られない)

 反対に海江田は常に丁寧で絶対に言葉を乱さない。感情が常に一定で、ハートの熱さを全面に出す深町とは全くやり方が異なるのだ。真逆だからこそどちらの良さも見られて、よりお互いの存在感に厚みが出ていく。

 それに2人はライバルかつ“友達”。敵対しながらも心のどこかでは繋がっている、なんと尊いのだろう。命を懸けた戦いを経て、お互いを尊敬するからこそ成り立つ関係性なのかもしれない。

 深町がいるから海江田が引き立ち、またその逆も……といったところ。それぞれの持つ個性と独自のカリスマ性に気づくと、より2人のキャラクターを味わい深く楽しめるだろう。

 ミステリアスで頭の中が読めない海江田だが、序盤と終盤では印象が大きく異なるため、“ただの嫌なやつ”から“なんだか気になる存在”に変わりゆく。何とも不思議な感覚だ。

 海江田四郎は、誰もが成し遂げられなかった危険地帯へ信念を持って飛び込む熱い男。乗務員を引き連れて指揮を取り、勝ち進んでいく姿には同性でさえときめきを覚えるに違いない。映画館に足を運べなかった人はぜひこの機会にドラマ版を観てみよう。リアルな海江田の勇姿を拝めば、あなたは完全に彼の虜になってしまうかもしれない。

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