『ONE PIECE』ルフィの復活めぐる“茶番”? 黄猿、本当に世界政府を裏切るかを考察

私情と命令の板挟みとなる「どっちつかずの正義」

  とはいえ現在の黄猿は五老星のジェイガルシア・サターン聖に右腕として使われている立場で、完全に“世界政府の言いなり”のような印象を受ける。第1105話ではボニーやくまが乗る真空ロケットを「天叢雲剣」(あまのむらくも)で一刀両断する場面があり、第1106話では空中に放り出された2人にトドメを刺そうとする素振りすら見せていた。

  しかし黄猿が本当に私情を押し殺し、任務に徹するキャラクターなのかどうかは判断が難しい。真空ロケットから放り出されたボニーとくまはたしかに窮地に陥ったものの、パシフィスタの暴走によって難を逃れている。ベガパンクのことを深く理解している黄猿からすれば、パシフィスタに埋め込まれた“秘密のプログラム”を事前に察していてもおかしくない。またトドメを刺そうとした動きも、ルフィが復活するタイミングを見計らった上での“茶番”だと解釈することができるのではないだろうか。

  任務には表向き従うものの、ギリギリのところで友人たちを救おうとする……。皮肉めいてはいるものの、私情と命令のあいだで揺れ動くという意味で、黄猿が標榜してきた「どっちつかずの正義」にふさわしい結果とも言えるだろう。

  なお、少し前のエピソードでは、「ギア5」の反動によって倒れ込んだルフィに何者かが食料を届けていたことが判明していた。この手助けによってルフィは復活を遂げ、ふたたび戦場に舞い戻ってエッグヘッドに“解放のドラム”を鳴り響かせることができた。食料を届けた人物は今のところ不明だが、光速の移動能力をもつ黄猿であれば、不可能ではないかもしれない。

  実際にルフィの傍に山積みにされた食料のなかには、黄猿の好物であるラーメンが含まれていた。この説が正しいとすれば、黄猿は自らルフィの復活を手助けし、ボニーとくまを自分の攻撃から“助け出させた”ことになる。とんだ迫真の演技だ。

  とはいえ黄猿がここまで激しい葛藤を抱えながら、世界政府の権力に従順に従っていることには、大きな謎があると言えるだろう。なぜ彼は青キジのように海軍を抜けて、自分の正義のために生きることを選ばなかったのだろうか。もしかすると黄猿は世界政府に何か弱みを握られており、裏切ることができない状況にあるのかもしれない。サターン聖がかつて難病のボニーを人質としてくまを操っていたことからも、そうした“裏取引き”の存在を勘ぐりたくなってしまう。

  黄猿がかけたサングラスの奥には、どんな真実が秘められているのか。「エッグヘッド編」はまだまだ激動の展開が続きそうだ。

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