深見東州『強運』、なぜロングセラーとなったのか? 徹底した営業戦略と書店の事情
なぜ『強運』は売れ続けているのか?
さて、都内にある大手書店に向かうと、『強運』の扱いが別格であることに気づく。タイトルが目に付きやすいように平積みにされていたり、特設コーナーが設けられている例もあるのだ。書店員に話を聞くと、『強運』は常に棚にあるベストセラーだと話す。
「深見東州さんの『強運』は、たちばな出版という半田晴久さんが経営する出版社から発行されています。私が通勤で利用している中央線の車両ドア部分にもよく広告が貼られていることもあってか、レジにいると年配の方から学生、女性のビジネスパーソンまで幅広い年齢層の方が購入していく姿を見かけますね。運を上げることをテーマにした本は、不況化や社会情勢が不安定な時になると売れる傾向にあります。今はまさに、そんな状況とマッチしているのかもしれません」
書店員が言うように、確かに『強運』の広告は電車の中で一際目に付く。思えば、「みすず学苑」も電車広告の知名度が突出して高い。たちばな出版やミスズは、日本有数の電車広告を巧みに駆使した宣伝手法をとっている企業といえるかもしれない。また、少し専門的な話として、書店員は書店ならではの興味深い事情も明らかにしてくれた。
「出版社が指定する本の分類を表す4桁のCコードというものがあって、このコードを見て書店員は棚に本を仕分けしていきます。『強運』のコードは、0073になっています。最初の0は一般、次の0は単行本で、最後の70は分類で言うと芸術総記なのです。深見さんにとってこの本は、心理学というよりも芸術的な本という位置付けであったということが興味深いですね。でも、『強運』が書店に届いたら、Cコードを見ないで大概心理学やスピリチュアルコーナーの棚に置く書店員が多いと思いますが」
Cコードを見ずとも書架にすぐに並べられるほど、『強運』がどのような本であるのか、書店員が熟知しているということだ。それほどの知名度が高いということは、紛れもないベストセラーである証しといえよう。
徹底したマーケティングとニーズの発掘
たちばな出版の公式サイトには「代表取締役社長 半田晴久より挨拶」として下記の文言が寄せられている。
確実に収益を確保する部分と夢とロマンを求めるところ、両方あるのが常に新しい発展と脱皮をする会社だと考えております。
特に出版社というのは、創造的な人たちが必要です。あまりに数値を追求したり、四角四面だと物作りの人たちは枯れてきます。ときどき、思い切った遊びをやって活性化する。そして常に創造的な人を募って斬新なものを作っては徹底して売り込む。これが我が社のモットーとしているところです。
こうした発言からも、半田が経営センスの持ち主であることがわかるだろう。『強運』は徹底したマーケティングによってニーズを掘り起こし、新しい発想と徹底した営業戦略によって生み出されたベストセラーといえるのかもしれない。