『呪術廻戦』宿儺の性格はなぜブレている? 二面性の秘密に関わる「双子だった」説

※本稿は『呪術廻戦』単行本最新刊までの内容を含んでいます。ネタバレにご注意ください。

 『呪術廻戦』において、“呪いの王”として君臨している両面宿儺。その二つ名の通り、人間に害をなす邪悪な存在ではあるのだが、実はところどころでキャラクター性がややブレているように見える描写が散らばっている。作者・芥見下々はなぜそうした描写を盛り込んでいるのだろうか。

  たとえば今振り返ると違和感が拭えないのが、第1話の初登場シーンだ。虎杖悠仁が特級呪物である「宿儺の指」を飲み込んだことで、その肉体に宿儺が宿り、現世に姿を現すことに。宿儺はゲラゲラと笑いながら「女はどこだ」と言い放ち、「女も子供も蛆のように湧いている」「鏖殺だ」と欲望を全開にしていた。

  いかにも軽薄な悪役のセリフで、女性や子どもを狙おうとするところも、その後の宿儺のイメージとはズレているように見える。ただ、これだけなら「初登場の段階ではキャラクターが定まっていなかった」という解釈や、「久々の現世に興奮した」という解釈なども成立するだろう。

  だが宿儺はこの時以外にも、まれに軽薄な態度を見せている。単行本24巻では、「契闊」の縛りを利用して伏黒恵の身体を乗っ取った後、虎杖に対して挑発的な言動をとっていた。

  この時の虎杖は戦意に満ちあふれていたが、宿儺は決着を付けることなく、あっさりとその場から退却。迎えにきた裏梅と一緒になり、虎杖の見た目が「播磨の」に似ていると言いながら爆笑する姿は、到底ラスボスには見えない。

  他方で宿儺は、強者との戦いを終えた後には、威厳たっぷりの“王らしい”態度をとることが多い。たとえば「渋谷事変」で特級呪霊・漏瑚を仕留めたシーンでは、相手の尊厳を踏みにじるどころか、「誇れ オマエは強い」とリスペクトにあふれた言葉を投げかけるのだった。

  さらに「死滅回游」以降では、そうした器の大きな態度を見せる場面が多くなっており、ますます軽薄な一面とのギャップが強まっている印象だ。まるで別人のような二面性を抱えた宿儺だが、ここには物語の核心に関わる重大な設定がひそんでいるのかもしれない。

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