『ジャンケットバンク』人気の秘密はテンポにあり? 新世代ギャンブル漫画の魅力を解説

  『カイジ』シリーズに『賭ケグルイ』、『LIAR GAME』や『嘘喰い』など、ギャンブルを題材にした漫画はいつの時代も人気だ。命の危険を伴うデスゲームを融合する作品も多く、ハラハラドキドキの展開が読者の心を掴む。

 そんななかで、2020年より「週刊ヤングジャンプ」で連載中の『ジャンケットバンク』が話題を集めている。経常利益が国内第3位のメガバンクでありながら、裏で巨大な賭場を開いている「カラス銀行」を舞台に、ギャンブラーと行員たちのスリルあふれる勝負を描く作品で、「AnimeJapan 2023」にて行われた第6回「アニメ化してほしいマンガランキング」では8位にランクインした。

 斬新な設定でありながら期待を裏切らない王道要素も備えた本作は、ギャンブル漫画好きなら絶対に外せない作品のひとつだ。本稿ではその魅力を解説したい。

オリジナルゲームと緊迫感溢れる心理戦に引き込まれる

 『ジャンケットバンク』に登場するプレイヤーは命を賭けたゲームに挑戦し、賞金を獲得するのだが、作中のオリジナルゲームが非常に魅力的だ。

 レコードを使用し、意識を保ち続けた側が勝利する『サウンドオブサイレンス』や、聖水や毒の服用による激しいバトル『アンハッピー・ホーリーグレイル』など。一つひとつのルールを説明しているとあっという間に文字数がオーバーするため概要は省略するが、他作品ではお目にかかれないような独自の戦いを見ることができる。

 ランクによりプレイヤーの危険性が上がり、同時に賭金も跳ね上がる。常に現場は緊張感が走り、心理の読み合いや精神力が問われるゲームたちについ釘付けになってしまう。

 また生命の危険が脅かされているというのに、冷静に戦いへ臨むプレイヤーの異質さには思わずゾクリ。心臓に悪い描写が連続するものの、どんどん読み進めたくなる中毒性がなんとも心地良いのだ。

飽きの来ない展開で読み進められるテンポの良さ

 漫画でよくある困った展開と言えば、「〇〇編」と一つの章が長すぎること。あまりに引き延ばされると離脱する読者が増え、熱狂的なファンでもトーンダウンする瞬間が必ずやってくる。

 その点、『ジャンケットバンク』は一つのゲームが程よい長さで完結する。ラウンド数が定められていない戦いもあるが、盛り上がりのピークでスパッと勝敗が決まるため、読者の最も気持ちがいい瞬間をうまいこと突いてくる。

 中だるみせず、熱を保ったままゲームを最後まで見届けられるテンポの良さ。そして、ずっと緊迫した状態が続くのが『ジャンケットバンク』ではない。ところどころお笑い要素を入れ、肩の力が抜けるようなギャグ回が挟まれることで、ギャンブルのスリルがさらに強調される。

 延々とデスゲームを見せられるとお腹がいっぱいになってしまうが、本作においては余計な心配をせずに済む。安定した面白さと読者が置いてけぼりにならない進み方には、誰もが引き込まれるだろう。

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