『明日カノ』いよいよ完結! 作者 をのひなお × 担当編集 トークイベントレポ

取材のため、初めてホストクラブに

――続いてのテーマです。作品のリアリティを生み出すために、どのような取材をしていますか?

梅崎:さっき楽屋でも話していたんですけど、これは難しいテーマだと思っていまして、頑張ってます、としか(苦笑)。最初は本当に手探りでした。

をの:4章から「本格的に取材しなきゃ描けない」となって。それからは毎週のように歌舞伎町に通っていましたね。

梅崎:私も初めてホストクラブに行って。すごいイケメンのホストに、横でささやかれて、太ももを撫でられながら「今日初めて?」って言われたりして……(笑)。5章は、歌い手さんとか配信者さんとかの取材がすごく大変だった思い出があります。その頃は『明日カノ』がある程度世に知られていたから、取材は受けていただけて話自体は聞けるんだけど、描けない話も多かった。

をの:6章はスナックに一緒に行きましたね。国分寺、中野、地方……一緒に占いも行きました。あとは飲み会に誘われると、私は断らずに行くんですけど、そうした場ではいろいろな人と話す機会があったりして、「取材してください」と言ってくださる方もいて、そうして取材を重ねていきました。

――次のテーマは「打ち合わせ」です。お二人は普段どのような打ち合わせをしていますか? 例えば意見のぶつかり合いだったり、上手くいかないときはありますか?

をの:喧嘩みたいになるときはありますね。梅崎さんの言うことが合っていることもあるし、私の言うことが合っていることもあるから、意見のぶつかり合いは、まあまああります。

梅崎:初期から今にかけて、打ち合わせのスタイルもだいぶ変わってきました。昔は社内で打ち合わせをしていたんですけど、最近は歩きながら話すことが多くなりましたね。1時間くらい散歩して、街ゆく人のファッションを見ながら、とか。だいたいいつも、ライブ感でやっていますね。

――作品をつくるうえでの「こだわり」を教えてください。

をの:こだわりというか、楽しかったな、いいもの描けたなと思えたのは、江美の章かなと思います。1998年のバンギャルが集まる話は、描くにあたって結構難しくて。当時を知らなかったので、資料を集めたり、有識者の方に確認してもらったりして、なかなか大変でした。でも、頑張っていいものが描けた達成感がありましたね。

――ちなみに描きやすいキャラ、描きにくいキャラはありますか?

をの:雪は描きづらいですねえ。髪の毛が黒いから、黒ベタといって、ペンでずっと手を動かして塗りつぶすんですよ。それから白で艶ベタを入れる。主人公に黒髪はちょっと大変なので、次からは主人公は、白い髪かトーンの紙にしようと思っています(笑)。

――打ち合わせのお話にも通じますが、キャラメイクはどのように詰めていった感じでしょうか?

をの:優愛は金髪と黒髪を2つ用意して、どっちがいいかなって、周りの意見を聞いたり、実際に歌舞伎町を見てみたりして決めました。章が進むにつれ、たれ目なのかつり目なのか、眉の形……と、どれだけ他のキャラと被らないか、どんどん選択肢が狭まっていったところがありますね。あとこの間、飲みの席で「作中に出てくるおじさんってどうやって書いてるんですか?」って聞かれたんですよ。だから、普通にGoogleで「おじさん」とかで検索して描いてるって言ったら「え? それで描けるんだ」って驚かれて、逆にこっちも驚きました(笑)。

梅崎:萌の変身前の恰好は、下北沢の古着屋の写真を送って「こんな服じゃない? 中央線系だと思う」ってやりとりしたり。逆にメインの女の子の本当にキラキラした服装とか、今っぽい服装はどうやってキャッチしてるの?

をの:え、やっぱりGoogleとかじゃないですか(笑)。ネットやSNSでインフルエンサーの可愛いなと思う子の服装やメイクはこうなんだ、とキャッチしていますね。検索力が高いのかな。

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