マツコ・デラックスを見出した、中村うさぎ「ガラパゴス諸島で珍獣見つけた感じ」今だから話せる稀有な“才能”と“笑撃”エピソード

2002年に出版された『アタシがマツコ・デラックス!』は、マツコ・デラックスの記念すべき最初の著書。当時のマツコのエッセイや写真が収められた貴重な一冊。
『うさぎとマツコの往復書簡』は「サンデー毎日」の連載を書籍化したもので、合計4作を数える共著。マツコともっとも多くの共著を出版しているのは中村である。

マツコの話は全部面白い!

――中村先生がそれほどまでに、マツコさんに惚れ込んだ理由はどこにあるのでしょうか。

中村:マツコと私はどこか似ている部分があるから親交が深まったんだと思うけれど、何よりもマツコがする話がぜんぶ面白かったからです。出張先のビジネスホテルで風呂に入ったら肉が詰まって出られなくなり、シャンプーを体に塗って出たとか、そんなエピソード持っている人なんていないじゃん(笑)。

――確かに(笑)。

中村:恋愛のエピソードも面白いんですよ。男の子の家からしめ出されてドアを叩いていたら、玄関の横の小窓が開いて水をザバーッとかけられたとか。千葉の実家でニート生活をしていたとき、シャワーを浴びていたら風呂場のドアをいきなりお母さんが開けて、「水だってタダじゃないんだよ!」と言われたとか。マツコが話してくるエピソードが漫画みたいで、いちいちぶっ飛んでいておかしいんだよ。

――ははは(笑)。中村先生はご自身がいいと思ったものや人を、周りに広めたいという欲求が強いのかもしれませんね。ゲーム雑誌のライターをしている頃から、一貫しているように思います。

中村:布教願望はあるかもしれないね。私が面白いと思ったものをみんなに面白いと思ってもらいたいという欲望が、根底にあるのかも。今の言葉で言えば“推し活”ですね。マツコに関して言えば、唯一無二だもん、あんな人。ガラパゴス諸島とかであまりにも珍しい珍獣を見つけたら持って帰りたくなるじゃない。みんなに「見て見て~!」と言いたくなるじゃない。そういう感覚かな。

――その気持ち、凄くわかります。

中村:そういえば、ホストにハマったときも明らかに布教願望があったね。その男を世界一のイケメンだと思っていたので、まったくホストに興味もないくらたま(倉田真由美)とか俵万智をホストクラブに連れて行って、見せて回ったくらいだから。思い返すと、美容整形についてエッセイを書いたのも布教願望。美容整形の真実を正しく伝えたいという思いがありましたね。買い物依存症以外のエッセイは、ほとんどが私にとって布教活動の一面があったんじゃないかな。

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