【漫画】赤ずきんが不思議な実を食べてトリップ!? サイケデリックなWeb漫画『ザ・フルーツ・オブ・ハピネス』に注目
――ストーリーに『赤ずきん』を引用した理由を教えてください。
カナコドンナコ:サイレント漫画(セリフの一切ない漫画)を描くにあたり、読者の方にとって分かりやすい作品世界を意識しました。そのため、多くの方に読み親しまれているであろう古典童話の『赤ずきん』をモチーフにしています。最初の1コマで「ああ、これは赤ずきんのパロディなのだな」と分かれば、セリフがなくても作品世界にスッと入り込むことができるのでは、といった考えですね。
――セリフがない代わりに絵で物語る作品ですが、この意図は?
カナコドンナコ:SNSで作品を発表していると、国内だけではなく海外の方からもコメントをいただきます。言葉の壁を越えて伝わる漫画を描いてみたいと思い、セリフは使わずに絵のみで漫画を描きました。大切なのは「分かりやすさ」。
セリフで状況説明ができない分、キャラクターの表情や動作で読者の方に物語を伝える必要があります。また絵に情報を詰め込み過ぎると、かえって要点が分かりづらくなり、読者の方が混乱する恐れがあります。その点を踏まえて、情報量のバランスには注意しました。
――サイケデリックな描写も特徴ですね。これについては?
カナコドンナコ:私なりの遊び心です。少し意外な展開があった方が、読者の方が飽きずに楽しめるかと思ったので。
――黄金のりんごは、恐らくタイトルとなった「ザ・フルーツ・オブ・ハピネス」なのかと思いますが、これはご自身的にどんな果物ですか?
カナコドンナコ:「ザ・フルーツ・オブ・ハピネス」、直訳すると「幸福の果実」です。主人公たちは黄金のりんごによって幸福になりましたが、見方を変えると破滅的なラストでもあります。そうした二面性を持つものとして、あのりんごを描きました。「幸福の形は人それぞれ」というメッセージも込めています。
――キュートかつ影を感じる作家性はどこからきたのでしょう?
カナコドンナコ:子どもの頃から、かわいらしいものが好きな一方で、暗いものや怖いものにも惹かれていました。図書館に通うことが好きで、明るく朗らかな 雰囲気の児童書から大人向けのドロドロとしたサスペンス小説まで、ジャンルを問わずに気になる本は手当たり次第に読んでいました。そうした経験が今の作風にストレートに反映されています。
――今後の展望や書きたい作品を教えください。
カナコドンナコ:悲劇と喜劇、その相反する2つを両立した物語を描いていきたいです。誰かの心の片隅にそっと残るような、そんな漫画を生み出すことができれば幸いです。