【漫画】村人たちが崇めていたのはあの巨大ロボ? 文明が滅んだ世界を描いた漫画がおもしろい

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

ナカマチ:物語を思いついたのが2年ほど前です。TV番組『バラエティー生活笑百科』(NHK系)のパーソナリティ・笑福亭仁鶴師匠が2021年にお亡くなりになってしまいましたが、そのあとも仁鶴師匠の番組として放送され「四角い仁鶴がま~るくおさめまっせ」というお決まりのフレーズもつかい続けられました。

 現在は番組の放送が終了しましたが、もしもこのまま仁鶴師匠のフレーズがつかい続けられて、いつかその意味も忘れ去られ、言葉の音だけが残ってしまったらと想像しながら本作を創作しました。

 また当時はコロナウィルスが流行しており、各地で等身大のガンダム像が建てられていた時期でもありました。ネット上でガンダム像が「疫病の流行った時期に建立された大仏」と扱われていたため、今の文明が滅んだあとにガンダム像の前で仁鶴師匠のフレーズを拝むように唱えるというイメージが浮かびました。

ーー作中で新たに解釈される、現代の身近な出来事から新鮮さ、可笑しさを感じました。

ナカマチ:昔は意味があったけれど、今は形だけが残っている。はたまた今でも残っている伝統は、元をたどれば些細なことから生まれているかもしれない……そんなことが多くあるのかなと思っています。

 「草」というネットスラングが笑いを意味する“ww”から変化した経緯を知らないと、笑いと草を結びつける表現からどこか風流を感じます。もしも『枕草子』に“草”という表現が出てきたら、現代では洒落ている表現だと思われていたかもしれません。

ーー作品の世界をたしかに感じることのできる、緻密な背景描写も印象に残っています。

ナカマチ:本作に限らず、背景を描写するなかで温度や湿度、匂いなど、その場にいるような臨場感を表現したいと意識しています。とくに本作では作中で進行していく物語と読者の認識にギャップが生まれることも意識していたため、文明が滅んだ世界も美しさや儚さをしっかりと描こうと思いました。

ーー文明が滅んだ世界でケンカや仲直りを描いた背景は?

ナカマチ:「ケンカ・仲直り」という題材は『バラエティー生活笑百科』が生活のトラブルを解決する番組であることになぞらえ、思いつきました。深く考えずに決まった題材ですが、真面目に進む物語と読者にしかわからないギャグのギャップとともに、些細な今の出来事と、人類が滅亡しかけるという大きな過去の事態のギャップも生まれた作品になったと振り返っています。

ーーナカマチさんが影響を受けた作品は?

ナカマチ:自分の根っこにあるのは『ドラえもん』です。こどものときはあまり漫画を読んでいなかったのですが、『ドラえもん』は何度も読み返していました。SF作品としての『ドラえもん』は漫画を描くうえで自身のベースになっています。

 また、映像作品では小学生のころに見た岩井俊二監督『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』にもすごく衝撃を受けました。作品の空気感を大切にしたいという思いはこの作品からつよく影響を受けています。

 文明が滅んだ世界を舞台とした本作においては、弐瓶勉先生『BLAME!』から影響を受けています。巨大な建設機械が意味もなく建物を広げたりなど、文明が滅んだ世界で本来の意味を失いながらも活動をつづけている様子を描いた作品であり、本作の発想の原点となっています。

ーー今後の活動について教えてください。

ナカマチ:基本的には私の地元である北海道を舞台とした漫画を描きたいです。本作は北海道から離れた作品だったので、つぎは北海道の漫画を描く予定です。ただ構想するなかでちいさなネタがちょくちょくと浮かぶため、北海道を舞台とした漫画を描く合間で別の漫画も描いていきたいです。

 昔から創作活動をしてきましたが、当時はSNSもなかったのでなにかをつくっても見せる人はいませんでした。Twitter(現X)をはじめたばかりの頃もフォロワーが3人ほどしかいませんでしたが、多くの人に見られなくても、とりあえず描きたいから描こうと思い創作を続けました。最近は作品の感想をいただいたり、フォローしてくださる方も増えてきました。

 本業で制作系の仕事をしているので、漫画も仕事としてやってみたいです。いずれ自身の作品を本にしてみたいという願望もあります。

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