『チェンソーマン』第2部のラスボスは「死の悪魔」? 混迷を極める最新15巻を読み解く

 一方、これまで把握できなかった物語の輪郭も、この巻ではっきりとしてきた。第131話。落下の悪魔にアサを襲わせたのが、飢餓の悪魔ことキガだったことが明らかとなる。キガはヨル(戦争の悪魔)を飢えさせて自分の駒に変えることで、ノストラダムスの大予言にある“最悪の恐怖”を阻止しようと目論んでいた。最悪の恐怖が訪れれば、人の時代が終わり「 悪魔の時代になる」とキガは語るのだが、最悪の恐怖とは、おそらく「死の悪魔」ではないかと推察される。

 第1部のラスボスだったマキマの正体で、現在はデンジと暮らす少女・ナユタに生まれ変わった支配の悪魔、アサと契約した戦争の悪魔、そしてナユタが「お姉ちゃん」と呼ぶ飢餓の悪魔。この三体の悪魔の名は、新約聖書のヨハネ黙示録に登場する四騎士がもたらすと言われる支配、戦争、飢餓、死という4つの概念から取られている。

 この中でまだ登場していないのは「死の悪魔」のみだが、これから『チェンソーマン』は、支配、戦争、飢餓の悪魔がデンジと協力して、「死の悪魔」と戦うクライマックスへと向かうのではないかと思う。状況だけ抜き出せば、少年漫画の王道と言える展開だ。

 だが、キガが戦う理由は(人の時代が終わると)ピザや中華料理がなくなるから嫌だという個人的なもので、キガに協力を求められたナユタも学校があるから無理だと言って、あっさり断ってしまう。

 一方、日本ではチェンソーマンの神聖化が進み、ノストラダムスの大予言を回避するために共に戦おうと呼びかける組織・世界平和チェンソーマン協会が登場。デンジを取り巻く状況も大きく変わっていく。

 物語の中心は再びデンジに移り、世界はより過酷で救いのない状況に突き進んでいく。同時にキガとナユタの会話のような、冗談のようなふざけたやりとりも増えてきており、シリアスなのかコメディなのかわからなくなっている。この反する要素が同時に描かれるため「どう受け止めればいいのだ?」と困惑する機会が多いのだが、この困惑する部分にこそ『チェンソーマン』の本質はあるのかもしれない。

■メイン画像
ARTFX J チェンソーマン マキマ 1/8スケール 完成品フィギュア
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©藤本タツキ/集英社・MAPPA

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