『呪術廻戦』五条悟と伏黒甚爾、相反する能力と個性 「懐玉・玉折」編を振り返る

 五条悟が“最強”になるまでの道筋が描かれたアニメ『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」編の幕が閉じた。クライマックスで繰り広げられた若かりし頃の五条悟と伏黒恵の父親・甚爾(とうじ)の死闘。それは戦闘シーンの迫力もさることながら、どこか寂しさも感じるものであった。

 作中トップクラスの強者に違いない五条と甚爾は、「懐玉」編において対照的なキャラクターとして描かれていた。本稿では五条と甚爾の関係を考察しながら「懐玉・玉折」編の物語を振り返りたい。

色をもつ五条と色をもたない甚爾

 親友・夏油傑とともに天内理子の護衛と抹消を命じられた五条悟。天内は「呪術界の要」と称される不死の呪術師・天元の器として選ばれた「星漿体」であり、甚爾ふくめ多くの者から命を狙われている。天内の護衛を命じられた五条は(夏油とともに)当時から相当な実力をもつ呪術師であったに違いない。

 そんな五条と対峙した甚爾は8巻第67話「懐玉-参-」にて“術師殺し”と称されている。天内の護衛を務めた呪霊を祓(はら)う術師・五条と、天内を殺害を図った術師殺しの甚爾の立場は対照的なものであろう。

 両者の立場とともに、ふたりのもつ能力も相反するものだ。

 五条は五条家相伝の術式「無下限呪術」によって強力な遠距離攻撃を繰り出すことができ、さらには五条自身に触れることさえ困難な術式となっている。それだけでなく相手の術式情報を視認できる「六眼」をその身に宿しており、六眼の精密な呪力操作によってほぼ無限に呪力を扱える。

 攻めや守り、はたまたスタミナにおいても隙が見当たらない呪術師・五条に対し、甚爾には呪力がまったく存在しない。その代わり「天与呪縛」という縛りから常人離れした身体能力と五感を獲得している。とくに「懐玉」編では呪力がないことを利用し、甚爾は五条に不意打ちを成功させた。

 呪力に関するさまざまな能力を有する五条と、呪力が存在しない甚爾。そんなふたりは呪術界のエリート家系出身という共通点も存在する。

 ただ五条は六眼と無下限呪術を併せ持つ存在として、五条家では甘やかされて育った(参考:『ジャンプGIGA』公式Q&Aより)。甚爾は呪力がない者として、呪術高専の生徒・禪院真希と同じく禪院家に否定されながら育ち、のちに禪院家から離れた。

 方や五条は「蒼(あお)」をはじめとした術式を巧みに操り、方や甚爾は呪力を持たない自身を「透明人間」と称した。「懐玉」編にて対峙した五条と甚爾は色をもつ者と色をもたない者としても対照的に描かれていた。

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