『ONE PIECE』コビーはもう一人の主人公? ルフィと対照的なキャラクター性と「勇気」という武器

 「週刊少年ジャンプ」での連載が最終章を迎え、毎回のように読者を沸かせている『ONE PIECE』。最新のエピソードのため具体的なネタバレは控えるが、7月24日発売号にて、長年のファンには思い入れのある海兵「コビー」が印象的な活躍を見せた。

 コビーは“アザーサイドの主人公”と捉えることもできる、作品を象徴するキャラクターのひとりだ。それはなぜか。

 コビーは性格から海賊/海軍という立場に至るまで、主人公のモンキー・D・ルフィと対照的であり、そのルフィとの出会いで大きく成長し、作中のゴッドファーザーと言えるルフィの祖父、モンキー・D・ガープの薫陶を受けている。そして、ルフィの「海賊王におれはなる!!!!」と対になる「ぼくは!!! 海軍将校になる男です!!!!」という名言ーー最新話での衝撃的な活躍も頷ける“裏主人公”とも言うべきバックグラウンドがあるのだ。

 コビーの描写について振り返ると初登場は早く、原作の第2話。幼少期から海兵に憧れていた少年・コビーは、女海賊「金棒のアルビダ」に捕えられ、航海士兼雑用係としてご機嫌を伺う日々を過ごしていた。気弱でネガティブ、愛想笑いでその場をやり過ごし、未来を諦めているコビー。そんななかで出会ったのが前向きで自由なルフィであり、その姿に感化され、逞しく成長していくことになる。コビーにとってのルフィは、ルフィにとってのシャンクスに置き換えられるだろう。

 天真爛漫で格闘センスに優れ、仲間思いで大喰らいーーそんなルフィは少年漫画の主人公として王道のキャラクターだが、コビーも負けていない。気弱で自信がなく、しかし愚直なまでの努力と信念で急成長していく姿は、断片的にしか描かれていなくても、読者の心を動かす主人公そのものだ。

 コビーがルフィという“国民的主人公”に勝る点があるとすれば、それはここ一番の「勇気」だろう。ルフィも勇気あふれる人物だが、戦闘自体に抵抗はなく、あらゆることに対して最初から覚悟が決まっている。その点、コビーはもともと気が弱く戦うことが苦手で、ガクガク震えながら、大義のために死地に飛び込むキャラクターだった(「頂上決戦編」における、海軍大将サカズキへの反抗が象徴的だ)。現在は若き英雄として精神面も成長を遂げているが、その成長の過程が読者にとって共感できるものであり、振り絞ってきた「勇気」はルフィより印象が強い。

 その志に能力と名声が追いついてきたコビーは、来たる最終決戦に向けても注目のキャラクターになった。ルフィ×シャンクスという師弟の再会も楽しみだが、海賊側の主人公ルフィ×海軍側の主人公コビーの再会も、どんな形になるのか期待が高まる。立場の違いから拳を交えることになるのか、あるいは立場を超えて共闘するのか。原作第二話から追いかけてきたあの気弱な少年が、まだまだ大きなことを成し遂げる気がしてならない。

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