『コクリコ坂から』には徳間書店創業者をモデルにしたキャラがいた  現在も続くスタジオジブリとの蜜月関係

『コクリコ坂から(徳間アニメ絵本32』(徳間書店)

 本日7月14日、ついに宮崎駿の最新作『君たちはどう生きるか』が公開され、今夜には「金曜ロードショー」でスタジオジブリ作品『コクリコ坂から』が放映される。『コクリコ坂から』は宮崎駿、宮崎吾郎親子の実質的な共作と言えるが、徳間書店の創業者・徳間康快をモデルにしたキャラクター、徳丸理事長が登場している点も見逃せない。そのうえ、作中に登場するビルは、徳間書店のビルをモチーフにしているという。

  なぜ、徳間書店なのだろうか。それは、スタジオジブリと徳間書店の深いつながりがある。今では知る人も少なくなったかもしれないが、徳間書店はスタジオジブリを黎明期から支えた存在であることをご存じだろうか。

  宮崎駿は古くからアニメファンの間では知られていた存在だったが、現在の様に一般層への知名度はほとんどないに等しかった。そんな宮崎に注目したのが、徳間書店に入社し、

『アニメージュ 8月号 (発売日2013年07月10日)』 (徳間書店)

編集部に在籍していた鈴木敏夫である。鈴木は、現在も宮崎の創作を支え続ける最重要人物の一人としてお馴染みである。

  鈴木は「アニメージュ」誌面で1981年に初めて、宮崎駿を紹介する記事を制作した。さらに、徳間書店に宮崎とともに映画の企画と提案したが、このときは不採用に終わってしまう。そこで、鈴木は漫画の連載をしないかともちかけた。こうして1982年に連載が始まったのが、漫画『風の谷のナウシカ』である。連載が始まると読者からの反応も上々だったため、鈴木が宮崎に『ナウシカ』の映画化の話を持ち掛けた。トップクラフトで制作されたナウシカは、1984年に上映されるに至った。

 『ナウシカ』は当時のアニメ映画としては興行成績の面でも成功をおさめる。そこで、宮崎駿と高畑勲に創作を専念してもらうべく、2人の作品を中心としたアニメーションスタジオの設立の話が生まれる。こうして1985年に設立されたのがご存知スタジオジブリであった。その記念碑的なアニメーション映画第一作となったのが、『天空の城ラピュタ』なのである。

  そして、スタジオジブリの設立に際しても徳間書店が出資し、蜜月関係が始まった。スタジオジブリの作品は真っ先に「アニメージュ」が紹介し、映画の公開時期が近づくと「アニメージュ」の表紙は決まってジブリ作品だった。宮崎や高畑の濃密なインタビューもたびたび掲載された。ちなみに、誌面の定番だった好きなアニメキャラのランキングでは、『美少女戦士セーラームーン』の水野亜美が登場するまでは、『風の谷のナウシカ』のナウシカが常に1位となっており、他のジブリ作品のキャラもランキング上位の定番であった。

  2005年以来、徳間書店とスタジオジブリは直接的な資本関係はなくなった。しかし、現在もジブリの関連書籍は徳間書店から出版されているものが多いのは、こうした経緯があってのことだ。『コクリコ坂から』を観賞する際は、ジブリと徳間書店の関係についても思いをはせてみると、作品が何倍も楽しくなるはずである。

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