音楽雑誌『Player』休刊に寄せて 55年にわたって愛され続けた誌面を振り返る
「このたび音楽雑誌Playerは、2023年6月30日発売Player2023年Summer号をもちまして休刊することと相成りました。1968年の創刊から55年にわたりご愛顧いただき感謝の気持ちでいっぱいです」 Player編集長 北村和孝
参考:https://player.jp/2023/06/14/2911/
2023年6月14日、多くの音楽ファン、音楽業界に激震が走った。1968年の創刊から55年に渡り、多くのロックファンに愛されてきた音楽誌『Player』(プレイヤー・コーポレーション)の休刊が発表された。
『Player』は1968年5月号、タブロイド判のニュースパーパー形態の『Young Mates Music』としてスタート。当初は楽器店のみでの販売だった。のち1973年4月号よりA4の雑誌形式となり、1975年1月号で『Young Mates Music Player』に改名。1976年10月号からは楽器店だけでなく、全国の書店での販売を開始する。80年代以降は主にギタープレイヤーを中心に、『ギター・マガジン』(リットーミュージック)、『ヤング・ギター』(シンコーミュージック)と並んで、楽器愛好家なら誰でも目にしたことがあるであろう、楽器奏者向けの音楽機材誌として広く知られるようになった。
各誌にはそれそれの特色がある。『ギター・マガジン』は1980年創刊。ロックのみならず、ジャズやフュージョンといった、さまざまなジャンルを取り上げ、ギターを楽器としてのメカニカルな視点から紐解いていくことを得意とし、『ヤング・ギター』は1968年にフォーク雑誌としてスタート。80年代以降はハードロック&ヘヴィメタルやプログレッシヴロックといった技巧派ギタリストを中心に扱い、テクニックの教則部分を強く押し出していた。対して『Player』はトラッドなロックに力を入れていた印象が強い。エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジといった、三大ギタリストをはじめ、サンタナにリッチー・ブラックモア……といった、オーセンティックなギターヒーローの情報といえば『Player』、というイメージを持っている人も多いことだろう。
ギターという楽器に関しても早くから骨董価値、芸術的視点から見ていた趣がある。まだ“ヴィンテージギター”という概念があまり認知されていなかった(当時は“オールド”などと呼ばれており、今ほど確立されていなかった) 80年代から、50年代~60年代のギターに着目していた(1985年2月号 ヴィンテージギター特集)。そのほか、“ビザールギター”と呼ばれる、いわゆる王道から外れたB級な存在のギターも、その愛好家であるデヴィッド・リンドレーのギターコレクションを紹介(1983年9月号)するなど、いち早く注目している。
海外を中心としたアーティストの愛用ギターを掲載する連載「The Guitar」は、その取り上げるアーティストの幅の広さと、何よりもギター写真の美しさもあって、連載開始当初から人気であった。Vo.1(1979年)からVol.11(2010年)まで、定期的にムック化されており、ギター好き垂涎のムックだった。ロック史における資料性としての価値も高いため、復刊を望む声も多い。
『ギター・マガジン』『ヤング・ギター』は、ギタリストに特化した雑誌であったが、『Player』はギターを中心としながらも、多方面の楽器を網羅している。新製品レビューには、ギター本体はもちろんのこと、アンプ、エフェクターなどの周辺機材のみならず、MTRといった録音機器まで幅広く掲載されていた。数年前まで同社ウェブサイトにて過去レビュー記事の一部がアーカイブとして閲覧できたのだが、転載などの問題があったのかはわからないが、現在は見ることができない。当時の最新機材の肌感覚がわかる資料でもあるので、今後何かしらの形で再び閲覧できるようになることを願う。
また、「プレイヤー人気投票」といったコーナーもあり、バンド全体に目を向けた雑誌であったことも忘れてはならない。ゆえに、“メンバー募集”ページの多さも特筆すべきところだ。“当方プロ志向”といった、意識の高いバンドメンバー募集といえば『Player』と言われていたものだ。80年代初期は隔週発行の時期もあり、メンバー募集のような読者のコミュニティはどの月刊誌よりもレスポンスが早かった。