最終回でモヤモヤ残した『あなたがしてくれなくても』 原作漫画ではどんな展開に?
セックスレスの問題に切り込んだ奈緒主演のドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)が6月22日に最終回を迎えた。これまで不倫ドラマとしては珍しく共感の声が多い本作だったが、主人公・みちの出した結論には戸惑う視聴者の声が目立った。本日6月29日放送の特別編では、主人公のみち(奈緒)が再び、陽一(永山瑛太)と出会うまでの間に、何を思っていたのかが描かれる回となっている。
一方、昨日6月28日にはハルノ晴の原作コミックス『あなたがしてくれなくても』(双葉社)の最新11巻が発売された。ハルノ晴はドラマの最終回放送後に「漫画の方はドラマとは違うストーリーになっていきます」と明言している。ドラマを追う形でクライマックスへと向かう原作の読みどころを、ライターの苫とり子氏に聞いた。
「『あなたがしてくれなくても』は累計940万部を突破し、今や双葉社のヒット作です。同じ双葉社の原作コミックスには、松本まりかさん主演でドラマ化された『それでも愛を誓いますか?』などもあり、昨今は不倫モノ・セックスレスをテーマにした漫画が増加傾向にあると思います。同様の題材で、よく広告で表示される過激なテイストの漫画は一方的に主人公目線で描かれている作品も多く、だれかひとりが悪者として描かれることが多い。一方で『あなたがしてくれなくても』は、W不倫でする側/される側の4人の視点で展開していて、それぞれの気持ちがわかるようにモノローグも多く、 繊細に心理描写されているのが面白い。11巻までの物語の流れは基本的に同じですが、ドラマの反響もあり、原作の結末にもより注目が集まっていると感じます」
ドラマ版と原作ではキャラクターの印象が異なるのも、それぞれの面白さであると苫氏は続ける。
「原作の陽一は普通の会社員で、みちへもハキハキと反発するような感情が分かりやすいキャラクターです。一方で、ドラマではコミュニケーションが苦手で気持ちがわかりにくい人物として描かれました。大人っぽくてアンニュイな雰囲気ながら、中身は子供のまま。どこか無気力さが漂っていて“こういう男性いるな”と感じさせる、女性が好きになるようなギャップが描かれていた。演じる永山瑛太さんの魅力がうまく融合された役どころと言えるでしょう。原作の陽一は明らかに子供っぽくて、ちょっと軽率な感じもあり、みちの方が落ち着いているくらいなんです。ちょっとドジで、ウジウジするみちを陽一が『しょうがないな』と見守る関係性にも、原作とは違った印象を受けます。
岩田剛典さんが演じた新名も少しイメージが異なります。見た目が良く、モテて、仕事ができるのは同じですが、原作ではただ優しくて、とにかく相手に尽くす普通の男性。ドラマだとうんちくを語ったり、最終回にロマンチックさが顕著に出すぎて“キャラ変”と話題になるほど、優しいだけじゃない人間味が宿ったキャラクターになっていました」
原作の結末を左右する上で、キャラクター以上にドラマ版と大きな違いが、みちと陽一は互いの不倫に気づいていないという点。最新刊では2組とも完全に離婚はしておらず、 誠が転職を機にみちと別れるところまでが描かれている。
「ドラマの最終回では、みちたちがよりを戻したことに対して、ネット上ではモヤモヤの声が目立っていて、新名を応援している人が多くいました。不倫モノで主人公が別れて、不倫相手と結ばれるのは、なかなか望まれない結末だと思います。この作品がこれまでの不倫ドラマと違うのは、お互いがこの人を好きになってもしょうがないなと共感できるように、みちと誠の苦しい気持ちが描かれてたことだと思います。
よりを戻す以上に、多くの視聴者をモヤモヤさせたのは、“結局、みちはどうしたかったの?”という点に尽きるでしょう。ドラマ版でみちは、子供を作ることに対する価値観の違いはあっても、陽一と生きることを決めた。みちがどれほど子供を欲しかったのか、楓(田中みな実)のように自立した女性になりたかったのか、それが曖昧でした。ドラマ版のみちはずっとブレブレなんですよね。原作では自分自身の問題より、夫婦の問題を一貫して考えている主人公の視点がありました。『みちとの子供が欲しい』と言えなかった陽一とは一緒にいれない、自立したいから仕事に一生懸命になるという視点は、原作のみちにはあまり感じられない部分でした」
ドラマはなぜ、よりを戻す結末になったのか? 「現代における夫婦の在り方が関係しているのではないか」と苫氏は考察する。