無惨の地獄編、炭治郎のラブコメ、愈史郎の永遠の日々……『鬼滅の刃』スピンオフが読みたいキャラ3選

※本稿は『鬼滅の刃』のネタバレを含みます。原作未読の方はご注意ください。

 テレビアニメ『鬼滅の刃』刀鍛冶の里編が終わり、時透無一郎(霞柱)や甘露寺蜜璃(恋柱)の初めての活躍に心を躍らせた読者も多いだろう。いよいよ次は「柱稽古編」で、鬼殺隊の精鋭である柱たち全員がクローズアップされる。放送が楽しみだ。

 「柱稽古編」には柱それぞれの考え方や行動原理が詰まっている。なぜ冨岡義勇(水柱)は不死川実弥(風柱)と伊黒小芭内(蛇柱)に嫌われているのか、ほのめかされる小芭内と甘露寺蜜璃(恋柱)の関係性、記憶を取り戻したあとの時透無一郎(霞柱)の様子など、柱たちのキャラが明確になる。

 そして次が待ち遠しくなるヒントも残される。実弥が実の弟の不死川玄弥に暴力的と言えるほどつらくあたる理由は考察しがいがあるだろう。

 「柱稽古編」は味方同士で鍛え合うので、稽古は過酷だが、嵐の前の静けさとも呼べるかもしれない。終われば本作は、一気に終盤に向かう。ラスボスの鬼舞辻無惨を倒すため、上弦の壱、弐、参がそれぞれ柱や鬼殺隊の隊員と戦うのだ。

 『鬼滅の刃』は漫画や小説でスピンオフになっているエピソードもあるが、最終回を迎えてもなお判明していないことがたくさんある。スピンオフのタイトルを考えつつ、「このエピソードは面白いのでは」と感じたものを挙げてみた。

鬼舞辻無惨の優雅な日々in地獄

 鬼舞辻無惨は鬼の始祖でもあり、すべての鬼たちは彼がいるから鬼になった。人間時代の無惨も悪人だったので、もっとも酷い地獄にいるはずである。

 しかし鬼舞辻が苦しみ続けている様子が想像できない。悲鳴をあげながら苦しんでいたとしたら、怒りのあまりまた生きている人間がいる世界に這い上がってきそうで逆に怖い。

 以上の理由から、無惨には「永遠の孤独」という地獄がいちばんふさわしいのではないかと感じた。

 見た目こそ優雅にティータイムを楽しんでいる様子の無惨。しかしそのお茶は汚水でできていて、椅子は針だらけ、テーブルは焼け付くように熱い。しかも無惨は一歩も動けないようにされ、表情も固定されている。

 はたから見るとそれは「無惨様の優雅なひととき」に見えるだろう。だが表情も行動も自由にできず、誰も訪れない場所でただただ無限の時を過ごす。筆者が勝手に作った地獄ではあるが、書きながらなんて恐ろしいのだろうと感じた。

 この地獄の描写は極端かもしれないが、死後の世界のある『鬼滅の刃』で最下層の地獄に行った無惨がどうすごしているのかは知りたいところである。焼き尽くされて無になっている可能性も高い。

バトルの後は炭治郎を巡る、とっておきのラブコメが!?

 炭治郎は女たらしの素質がある。

 作中でも蝶屋敷で働く女の子たちに既にモテていた。将来結ばれることになるカナヲや蝶屋敷で隊士の看護をしていたアオイ、3人娘、鬼殺隊の女子隊員など、生き残った女性たちを思い浮かべるとわかる。

 しかし自分がモテていることに気づかない天然の炭治郎は、無惨を倒したあと、やっと人間になった禰豆子を最優先にして行動するだろう。そんな彼を女性たちは苦々しく思い、察した禰豆子が兄を誰かといっしょにさせなければと奮闘する。影では、こっそりと善逸がモテモテの炭治郎に嫉妬しているのではないだろうか。

 最終的にはカナヲがいわゆる「勝ちヒロイン」になる。これはひとつのラブコメ漫画としてとても面白そうである。

 ただアオイは原作の終盤で、将来の結婚相手である伊之助との今後をほのめかすシーンがある。とはいえ伊之助はアオイに対する恋愛感情を自覚して表現するのが苦手そうなので、ふたりが結ばれるまでには時間がかかるだろう。

 禰豆子のことばかりを想ってシスコンになりかけていた炭治郎が、数ある女性たちからカナヲを選んで結婚した過程も知りたいし、善逸の片思いがやっと報われて禰豆子と結婚するまでのなれそめも気になる。

 バトルの後の穏やかなラブコメは読者の心も癒すのではないだろうか。

永遠に生きる愈史郎 それは幸せなことなのか

 『鬼滅の刃』でもっとも不幸だったのは誰だろう。私の書いた「救いのないキャラ」コラムでは挙げなかったが、その後気になり始めたのが、鬼のいなくなった世の中で唯一の鬼として生き続ける愈史郎のことである。

 彼のことを語るうえでは、無惨の支配を逃れた鬼で医学にも長けた珠世の存在が欠かせない。病弱だった愈史郎は珠世によって鬼となり、彼女に仕えることを何よりの喜びとするほど愛していた。

 珠世亡き後も生き続けた愈史郎は、謎めいた画家となり珠世の絵を描き続けて現代に至る。彼が永遠に生き続けることを知っているのは、現代日本で最高齢になった産屋敷輝利哉のみで彼とは友だちになっているという公式設定もある。

 だが関東大震災や第二次世界大戦で揺れ動く日本を、愈史郎はどのように見て何を感じたのだろうか。100年経っても珠世が忘れられず絵を描き続けているのも、幸せなことだとは思えない。

 こうなると大正時代に炭治郎が言った「愈史郎さん 死なないでくださいね」はもはや呪いである。『鬼滅の刃』は死後の世界があるという設定で、人を食べたことのある珠世は地獄にいるはずだが、愈史郎はひとりで珠世に焦がれながら生き続けるより、地獄で珠世に仕えるほうが幸せな気もする。

 現代を超えて未来へと進む愈史郎が、どのように生きることをやめるのか。それを描いたスピンオフも読んでみたい。

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