【漫画】地下で働く女性とトビ職人の男性と出会って……「カレー未満」な関係性を描いた漫画が面白い

ーーチカさんの世界をまるごと包み込む、飛島さんのやさしさに魅力を感じました。本作を創作したきっかけは?

藤沢チヒロ(以下、藤沢):本作は私が制作している『ポッケ』という同人誌に収録した作品です。そのときはカレー特集としてさまざまな作家さんとともにアンソロジーをつくっていました。アンソロジーの収録作として本作をつくるなか、以前から描きたいと思っていたお話やカップル像を描こうと思っていました。

ーーどんなお話を描きたいと思っていた?

藤沢:以前から地下街ではたらく人々のお話を描きたいと思っていて、地下で働きほとんど地上に出ない女性が外で飛び回る男性と知り合い、彼が彼女を地上に連れ出してくれるというお話を考えていました。

 そんなふたりをカレー特集の1冊に収録する作品として描くということとなり、スープカレーも交えた本作のような物語となりました。

ーースープカレーや石狩のロックフェスなど、作中では北海道を感じるものが多く描かれていました。

藤沢:私が北海道に在住であること、本作を収録した同人誌は北海道に縁のある作家さんに執筆してもらうアンソロジーとして制作していることが背景にあります。

 本作を読んだおそらく北海道の方がTwitterで「札幌の周辺は地下街が発達しているから、日にあたらず歩けるよと女の子に伝えてあげたい」や「このふたりが北海道に来てほしい」など、好意的な感想を寄せてくださりうれしく思いました。

ーー本作や同人誌を手掛けるなかで印象に残っていることを教えてください。

藤沢:同人誌にはページ数に限りがあるので、本作は長いお話を縮めて描くこととなりました。ただ短くしたことで言いたいことのエッセンスを強調することができたと感じ、描いてよかったと思える作品になりました。

 最初の扉絵と最終ページは描いていて楽しく、自分でもうまく描けたと思えたため印象に残っているページです。

ーー藤沢さんは漫画の制作以外にもさまざまな活動をしているかと思います。漫画を描きはじめたきっかけは?

藤沢:大学4年生のときに就職活動で失敗し、その年の夏の時点で内定がない状態になりました。時間ができたので出版社に作品を投稿しようと思ったことが漫画を描きはじめたきっかけです。その投稿作で担当さんがつき、就職浪人をしながら漫画を描いていました。

 大学を卒業して2年目の春に、出版社の営業部のアルバイトと商業誌でのデビューがほぼ同時に決まりました。そのため最初は2足のわらじで漫画を描いていました。同じ会社のライトノベルの編集部に移ってからは、企業の宣伝漫画を手掛けることはありつつも、雑誌で漫画を描くことはなくなりました。

 そのあと転職などを経て北海道へ移住したこともあり、再び漫画を描きはじめました。現在は編集の仕事も受けながら漫画を描いています。

ーーアンソロジーとして同人誌を手掛けつづける背景は?

藤沢:北海道で知り合った作家さんたちと話すなかで、本が売れなかったり、連載準備のために長期間無収入になることなどが話題になりました。そのなかで出版社を通さずに作品を出版し、どれくらい収入を得られるのかと実験しつつ、創作界隈が活気づくことを目指し、友人の作家さんと協力して電子書籍の同人アンソロジーを制作しはじめました。

 結果的には作家さんに配当できる印税は少なかったです。ただ北海道をテーマにしたアンソロジーをつくることは楽しく、電子書籍を手掛けたからこそ紙の書籍もいいなと感じ、『ポッケ』では今に至るまで私の読みたいものを集めた同人誌をつくり続けています。

ーー今後の活動を教えてください。

藤沢:同人誌では20〜40代の女性を主人公とした作品を描くことが多いです。それを読んでくださった同年代の方々がほっこりするような作品を描いていきたいです。またお酒や食べ物を題材とすることも多いので、おいしいものを食べに行きたいみたいな、感情が行動に移してもらえるような作品を描いていけたらいいなと思っています。

 2足のわらじを履いたことで漫画家として遠回りしている分、これから頑張りたいです。

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