【推しの子】有馬かなの感情はジェットコースター? 俳優として真価を発揮する鍵はその「素直さ」にあり

※本稿は『【推しの子】』のネタバレや考察を含みます。原作未読の方はご注意ください。

 先日放送されたアニメ『【推しの子】』8話では、主人公のアクアと、恋愛リアリティショー「今からガチ恋始めます」(今ガチ)共演者の黒川あかねの恋愛模様が大きな進展を迎えることになった。ふたりの今後にも注目が集まるなか、その状況に振り回されていたのが、有馬かなである。Aパートの前半では、アクアとあかねが仲睦まじくしている様子に対し、アクアに仄かな恋心を持つ有馬は「面白くない」「アクアの顔も見たくない」と悪態をついていた。

 しかし、その後にアクアから学校をサボって遊びに行こうと誘われると、一転して上機嫌に。笑顔のまま「マジさいあく!」と連呼しながら歩く姿は、少し前まで怒っていた人物とは思えないほど。単純過ぎるほどの彼女の浮かれぶりや可愛らしさが、アニメ制作スタッフの気合いの入った作画でさらに強調されていた。

 だが、ここからさらに事態は180度変わることに。「今ガチ」の最終話では、アクアがあかねにキスをしたため、番組上ではカップル成立となってしまう。その一部始終を観ていた有馬は、真の意味で「マジさいあく」とつぶやくのだ。一連の出来事から二転三転と感情を振り回されている有馬の心情が、まるでジェットコースターのようだと例えられる声もSNSには上がっていた。

 有馬といえば、子役時代はその売れっ子ぶりから天狗になっていた時期があり、その頃の名残で高校2年生に成長した現在でも口の悪さは変わらない。また、アクアに対しては、いじらしいほどに乙女ちっくな表情を見せることもあり、その時々の感情が表情や仕草にハッキリと表れるタイプ。感情が隠せない性格であるがゆえに、ある意味、登場人物たちのなかで最も素直なキャラクターである。

 彼女の素直な感情は、演技力にも直結しているように思う。原作の「2.5次元舞台編」では、アクアから発破をかけられたことで、実力派集団である劇団ララライの役者を差し置いて圧倒的な演技力を披露する描写がある。このシーンは作中の登場人物から、「目を焼く程に眩い太陽の様なスターの演技」と評価されており、自分を見てほしいという素直な欲求を全面に出せたからこその演技だと分析されている。

 子役時代に挫折を味わった有馬は、芸能界を生き抜くための処世術として周りの演技力に合わせることが上手くなったという経緯があるが、それが枷となって埋もれていた部分があるということだろう。彼女が本来持つ天性の素直さを演技でも出せたときにこそ、俳優としての真価を発揮できるということではないだろうか。

 このほど放送された8話は、そういった有馬の本質的な部分が見え隠れするような回だった。彼女がこれから俳優としてどう成長していくのか、引き続き見守っていきたい。

関連記事