『刀剣乱舞』の日本刀ブーム、衰える気配なし? 新たなファン増加で関連雑誌は売れ行き好調

 ホビージャパンが刊行する「刀剣画報」の最新号では「鶴丸国永と日本刀入門」が特集されている。なかでも「日本刀入門」は注目の特集だ。編集部は初めて刀剣に興味を持った人から勉強中の人まで満足できる内容と謳っており、さらに博物館を訪問したときの具体的な鑑賞術についても紹介している

 こうした入門編や鑑賞術などの特集が新しく組まれるということは、新しい刀剣ファンが増えていることのあかしでもある。シミュレーションゲーム『刀剣乱舞』シリーズをきっかけに起こった刀剣ブームは、依然として衰える気配はないようである。

 実際、2022年にミュージカル「『刀剣乱舞』 江 おん すていじ ~新編 里見八犬伝~」の篭手切江、豊前江、桑名江、松井江、五月雨江、村雲江のビジュアルで、田村升吾、立花裕大、福井巴也、笹森裕貴、山﨑晶吾、永田聖一朗が表紙と巻頭特集を飾った「TVガイドStage Stars vol.20」は、圧倒的な売れ行きとなり重版が決定した。『刀剣乱舞』 は舞台上映でも高い人気を誇っている。

 記者はこれまで何度か雑誌や書籍で刀剣の記事を執筆しているが、そのたびに若い世代の刀剣ファンの勢いに圧倒されている。

 例えば、「サライ」2020年5月号で「初めての刀剣鑑賞の極意」と題した刀剣特集を担当した時も、明らかに従来の読者とは異なる若い世代が購入していたし、「名物稲葉江」の原寸大ポスターの付録目当てに買う人も少なくなかったようだ。記者の友人の刀剣女子ははじめて「サライ」を買ったと言っていた。

 それに2022年に『刀剣乱舞』 江 おん すていじ ~新編 里見八犬伝~より篭手切江、豊前江、桑名江、松井江、五月雨江、村雲江のビジュアルで田村升吾、立花裕大、福井巴也、笹森裕貴、山﨑晶吾、永田聖一朗が表紙・巻頭特集を飾った「TVガイドStage Stars vol.20」は売れ行き好調につき重版が決定するなど刀剣乱舞は舞台上映でも高い人気を誇っている。。

 他にも、2022年に栃木県足利市の足利市美術館で開催された、「戦国武将 足利長尾の武と美-その命脈は永遠に-」では、市に縁の深い刀工・堀川国広「山姥切国広」が展示され、約2万5000人が来場したという。記者も現地を取材したが、山姥切国広の前にはガラスケースの前まで長蛇の列ができ、真剣なまなざしで鑑賞している人ばかりだった。

 この期間中に足利市にもたらされた経済効果は約4億8000万円という試算が出ていたようだが、実際に市内を歩いていても刀剣ファンが目に付く状態で、普段は静かな足利市街のようすが一変していた。これがもしコロナ騒動の期間でなければ、この1.5倍か、2倍は来場者が見込めたかもしれない。

 一方で、雑誌「ディスカバージャパン」で刀剣関係者に取材をしたときに出た話だが、刀剣の“実物”の売上にはそれほど大きな変化はないそうだ。過去を振り返ってみると、1970年代前半は刀剣のコレクターが増加した時期で、日本刀を扱う入門書や美術書が数多く出版され、各地の百貨店で刀剣の展示即売会がおこなわれるなど盛況だったという。この時期は実物を買い求める人が多く、刀剣の値段も上がっていたとされる。

 現代もこれほど刀剣ファンが増えると、刀剣の専門店が各地にでき、高級腕時計やポケモンカードのように刀剣の値段が高騰でもしそうな気がするが、それほどの事態は起きていない。記者の知人で数年前に重要文化財指定の刀剣を売却した人がいるが、話を聞くと「エッ、そんなに安いの? 重要文化財なのに」という印象であった。金額は大人の事情で書けないのが残念だが、都道府県指定ではなく国指定の重要文化財であり、もっと高くてもいいような気がした。

 どうやら刀剣はなかなか所有するとなるとハードルが高い代物で、投機対象としてもそれほど注目はされていないようである。また、刀剣専門店はなかなか敷居が高く入りにくいのも、若い世代が手を出しにくい要因かもしれない。

 重要文化財を売却した刀剣コレクターは「刀剣のコレクターはほとんどが男、しかも若い世代が全然増えていないのは課題」と言っていた。刀工など日本刀にかかわる職人の育成のためにも、コレクターが育つことは課題という。「日本刀を所有して鑑賞する楽しみも若い世代に知ってもらいたい。そのためにはもっと愛好家が情報発信をすることが大切かもしれないが、ファンは高齢者が中心で、ネットを使いこなせない人も多いだろう。情報発信ができる人が増えて欲しいものだが……」とのことである。

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