『チェンソーマン』第二部でなぜ作風が激変した? 藤本タツキの巧みな”内面描写”を考察

 斬新かつスタイリッシュな作風により、国内外で人気を博している漫画『チェンソーマン』。現在は「少年ジャンプ+」で第二部「学園編」が連載されているが、その作風が第一部「公安編」から激変したという見方もあるようだ。

 まず第一部は、「週刊少年ジャンプ」で2018年から2020年末にかけて連載された。主人公のデンジがチェンソーの悪魔に変身する力を手に入れ、公安対魔特異4課のマキマに拾われた後、デビルハンターとして活躍していく物語だ。

 その作風として印象的なのが、内面描写の欠如。悲惨な環境で育ったデンジは「普通の生活」に憧れているが、精神的には純真な子どもに近い。食や性といった動物的な欲求を行動原理としており、人間らしい葛藤はほとんど見られなかった。

 そこで作中では、デンジの代わりに周囲のキャラクターが内面を掘り下げられることに。それぞれに重い過去を背負うアキや姫野が、地獄のような日々のなかで苦悩していく。

 こうしたデンジと他のデビルハンターの違いは、意図的に対比として描かれたものだろう。すぐれたデビルハンターの条件として、「頭のネジがぶっ飛んでるヤツだ」と語られていたように、デンジは人間的な内面をもたないからこそ強いのだ。

 その一方、内面描写という観点で見ると、昨年7月から始まった第二部は真逆の作風となっている。

 第二部の主人公を務めるのは、鬱屈とした学園生活を送る女子高生・三鷹アサ。彼女はクラスメイトとの関係に悩み、恋人がいないことを卑下し、カップルに悪態をつく……。どこまでも等身大の人間だ。

 第一話のモノローグで明かされた「もうちょっとだけ 自分勝手に生きてみればよかった」という心情は、アサの人間性を象徴するものだろう。彼女の内面には嫉妬・劣等感・虚栄心などが渦巻いており、事あるごとにそれが顔を覗かせる。

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