【漫画】才能、容姿、環境……もしも三途の川で「来世のギフト」が選べたら? 生き方を考えさせられる漫画が話題

――37ページで読み応えのある本作をTwitterに投稿された経緯は?

寺田浩晃(以下、寺田):短編を集めたコミック『黒猫は泣かない。』から表題作と本作を宣伝も兼ねて投稿しました。Twitterに投稿したのは初めてなので、まだ反響などの実感がないですね。

――着想なども気になります。

寺田:ヒントは担当編集さんのアドバイスでした。僕の漫画を家に例えて「寺田君の描く漫画は中身の構造や骨組みが精巧だけど、外装が地味で人が入ってこない」と。ならば中身を変えずに、人が入りたくなる設定を考えようと思ったんです。そこで浮かんだのが「来世で使えるものが買えるショッピングモール」というアイデア。その上で今までやってきた人間ドラマをがっつりやろう、というのが最初でした。

――制作期間は?

寺田:ネームを作ってから2カ月くらいです。ひとりで仕上げていきました。書き出しが大事で、今回だと「『死んだ虫の眼をしてる』/親父によく言われた」というモノローグが描けてから一気にできあがった気がします。ラストシーンも最初から浮かんでました。

――ある意味で曖昧なエンディングとなっているのも気になりました。

寺田:単純に僕の好みです。本を読む時も、漫画を描く時も一番重視するのは読後感なんですよ。「はっきり言ってよ」という方もいるかもしれませんが、終わった後に少しぼかして想像の余地を残すのが理想。

――キャラクターやストーリーにモデルや参照したことはあります?

寺田:脚本を描いている時に浮かんだキャラクターですね。物語については、自分がそうだったということもあり、学校や家に居場所がない人の話を描くことが多いかな。彼らに向けて描いている気持ちもありますね。

 素敵な家族や同級生に恵まれたら、それはそれで素敵ですが、そうでなかった場合に無理やり仲良くする必要はないんじゃないかと。それなら気の合う他人と過ごしていた方がいいと自分が考えていることに最近気づきました。死後の世界でも血の繋がりも関係もなかった3人が心を通い合わせる瞬間の方が大切だと思うし、それを描きたかったんです。

――なぜアウトレットだったのでしょうか?

寺田:もちろん意味はありますが、読んだ方の想像の余地を残す為にも今はまだ秘密です。

――なるほど。タイトルの語感や表現センスはどこで培われたのですか?

寺田:本ですね。実は本作を描いてから少し経ってから病気で倒れて、1年半ほどベッドの上にいた時期があるんです。その時もずっと本を読んでいて、「聖書」や「古事記」も含めて興味深かったですね。宗教についても考えながら「三途の川アウトレットパーク」なんてふざけたタイトルは日本でしか名付け得ないものだなと思いました。

 その後、ドラマ『世にも奇妙な物語』で実写化された時はすごい反響でしたね。それから連載の話をもらって、そちらでは、先ほどの日本の混ぜこぜの宗教観をミックスした新たな内容で描いています。

関連記事