ウェブ漫画制作スタジオ「GIGATOON Studio」による今話題の縦スクロール漫画『FISH Buzz』（原作：筧昌也・小田康平／作画：ギークトイズ）は、DMMブックスで好評連載中で、漫画業界に新風を吹き込んでいる。

【試し読み】人気クリエイターはどんな活躍をする？『FISH Buzz』を読む

　2022年。クリエイターや若い俳優を支援するシェアハウス「FISH HOUSE」には、それぞれの事情を抱えた若者が集まっていた。主人公の「ゆーり」は、女優を目指す女子高生。「けい。」はカメラ助手として働く草食系男子で、「難聴うさぎ」はパワフルな人気TikToker。「FISH HOUSE」のオーナーで女優の深海は、ある事件からゆーりを救ったことをきっかけに、悪徳芸能事務所イーグリンの社長・乾鷲の怒りを買い、自殺に追い込まれてしまう。一命は取り留めたものの、昏睡状態に陥ってしまう深海。彼女を敬愛する「FISH HOUSE」の面々は、復讐のため動き出すーー。

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　4月よりスタートした本作は、若者世代を中心に高い人気を誇るクリエイターをモデルにしたキャラクターが登場するオリジナルストーリーだ。各クリエイターのファンは当然、それだけで楽しく読み進めることができるが、面白いのはドラマとしての熱量が高く、この漫画単体で先が気になる作品として成立していることだ。つまり、本作を読んでクリエイターに関心を持つ“逆輸入”的なファンが増えそうで、それぞれの公式SNSでのコラボ企画を含めたメディアミックスにより、相乗的に魅力が高まっていくことになるだろう。

　もともと高いタレント性を持つクリエイターをモデルにしているのだから、キャラクターが魅力的なのは当然と言えば当然だ。主人公の「ゆーり」は世界中にファンを抱える、日本を代表するTikToker。「（間宮）けい。」はトークやバラエティ企画に優れたクリエイターで、撮影技術の高さが「カメラ助手」という設定につながっている。「難聴うさぎ」は感音性難聴3級という聴覚障がいを抱えながら、さまざまなチャレンジでファンに勇気を与え続けている。そんな背景を知った上で『FISH Buzz』を読むと、得られる情報量が変わり、さらに深く感情移入してしまう。

　また、「FISH HOUSE」のメンバー以外にも、ミュージシャンを目指すイーグリン期待の新人として、歌ってみた＆踊ってみたで人気の「sera」が登場。同じくイーグリンに所属する舞台俳優として登場する「遊馬晃祐」は、実際に2.5次元舞台『ハイキュー!!』でデビューし、TikTokのフォロワーも30万人を超える人気俳優だ。脇を固めるキャストも力強い。

　本作のひとつのテーマとなる「復讐」は、昨今の漫画業界のトレンドでもある。単純な勧善懲悪ではなく、あらゆる手を尽くして理不尽に奪われたものを取り返すカタルシスは、『FISH Buzz』に期待できる大きな楽しみと言えるだろう。そして、さまざまな事情を抱えた若者たちの「成長」は、深い悲しみや闇に支配されそうな物語を明るく照らし、読者に勇気を与えるものになるだろう。

　無料で読める第一話から、重苦しく衝撃的な展開が待っている。その先に、各キャラクターのモデルになったインフルエンサーたちが体現するような、明るく前向きな世界が待っていることを信じて、連載を追いかけよう。

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©筧昌也・小田康平／ギークトイズ／GigatoonStudio