【漫画】とある雨の日、イケメンに突然話しかけられたら? ドキドキのシチュエーション描いたSNS漫画
――本作のアイデアはどこから?
伊佐坂みつほ(以下、伊佐坂):もともと5年前にInstagramに投稿した漫画で、友達から聞いた実話がベースになっています。彼女が傘を忘れて彼氏を駅で待っていたら、その前をイケメンが歩いていたそうなんです。それを後ろから見ていたら、彼が急に振り向いて「傘に入る?」という顔をされたと。
本音では傘に入りたかったらしいんですよ。でも当時、1カ月後に結婚式を控えていたこともあってか、行動に移さなかった。それを聞いて「日常的にあることだよね」と感じたんですね。自分のなかで消化してしまう些細な話を、あえて漫画にしたいと思ったんです。
――結婚式を1カ月後に控えた女性がこういった妄想をするとは興味深いです。
伊佐坂:彼女は親友で、私だけに打ち明けてくれたと思います。でも漫画にしていいかと尋ねたら、ノリノリで許可してくれました(笑)。普段描いているギャグマンガは自分のなかから着想が湧くのですが、恋愛漫画を描くときは友達の話などをネタにすることが多いですね。
――今年の3月にTwitterに再掲載されたのはなぜでしょう。
伊佐坂:本作を個人的に気に入っているのと、マンガサイト「くらげバンチ」の「第24回くらツイ漫画賞」に応募するためでした。今回の取材に繋がって嬉しかったです。
――制作の際に工夫したことなどがあれば教えてください。
伊佐坂:特にラストシーンは考えましたね。最後のコマは女性が観ている目線の先に、男性がいるかどうか迷ったんです。単純に歩いて離れる様子を描くだけでは惜しい気がして、私としては完全に姿がないか、もしくは雨で見えなくなっているのがいいのかなと。
最終的には「いるのかいないのか判別できない状態」という幕切れになりました。ミステリアスな終わり方が個人的に好きなんですよ。このラストが描けたということと、雨が好きな点で本作は自作のなかでも思い入れが強いです。
――絵柄については?
伊佐坂:人物の表情は微妙な感情の差で変わるので、そこは細かく描きたいと思いました。具体的にいうと女性が男性をチラ見する瞬間の顔などですね。普通ヒロインの表情は整った感じに描かれがちですが、絵柄的におしゃれかどうかは意識せずに自由に描きました。
――ギャグ漫画と恋愛漫画を描くときの考え方に違いなどあれば教えてください。
伊佐坂:恋愛ものは失恋であっても、叶わない恋であっても、前向きな物語にしようと心がけています。ギャグを描くのは腹が立った怒りや消化できないことを作品に落とし込みますね。
――ネガティブな感情を創造に変えていくスタイルなんですね。
伊佐坂:もともと人とコミュニケーションが取れなかったんですよ。中学校は登校したくなかったですし、友達もできないし、隣の人とも喋れない。でも「これじゃ社会に出れないし、自分も壊れてしまう」と感じた時に、「妄想で何とかするしかない」と思い至ったんです。「この人は私と話したいけど、うまく話せないんだ」など、ネガティブな気持ちを前向きに変えることで、平常心を保てたという経験が作風に影響しているのかもしれません。
――興味深いです。そんな考え方の転換を漫画にも落とし込むようになったと。
伊佐坂:漫画を描き始めたのは6年前からです。それまでは飲食業やサービス業などの仕事をしていたのですが、親の大反対を受けながらも描き続けました。それも現状はこうだけど、未来は必ず思った通りにいくと信じて漫画で表現していました。現在は育児中で2年ほど制作を休んでいますが、また夏頃から腰を据えて描くつもりです。