【漫画】AIに奪われる仕事は単純労働だけじゃない? 未来の工場勤務を描いたSNS漫画に注目
ーー本作は2022年5月に創作した作品だと伺っております。創作のきっかけを教えてください。
今成震(以下、今成):当時はAIによって画像を生成するサービスが開始されたばかりのころでした。私は技術革新によって肉体労働などから楽になっていくと思っていましたが、実際にコンピュータやAI技術がもたらしたものを振り返るなかで、熟練を要するものやアイデアを必要とするものなどから技術革新の影響を受けてしまうのではないかと考えました。そういった発想を元に本作を描いてみました。
ーー背景の描写や「減圧ルーム」といった固有名詞など、工場のデティールの細かさが印象に残っています。
今成:とりわけ細かく設定していたわけではありませんが、溶けた金属が流れていくさまなど、鉄工場の写真を参考に作画しました。
また作画の際にはなるべくデジタルツールはつかわず、アナログな道具を使い手描きによって描きこむことを意識していました。本作はAIをモチーフとしているものの、手描きによってつくられている。そんな対比を表現できればと思っていました。
ーー紙やペンを用いて漫画を描くことの魅力とは?
今成:たとえば職人さん、そしてロボットが握ったお寿司を比べる際など、手作りの方が高級だと思われているかと思います。できるだけアナログの画材を用いて描くことで、AIに生み出すことのできない価値が生まれるのではないかと考えながら制作しました。
ーー2人が大盛りの炒飯、ラーメンを食べている様子に人間味を感じました。
今成:パンチの効いた食材を描こうと思い、これらの料理を描きました。また本作は少し重いテーマの作品であるため、できるだけ読みやすくなるように描いたという背景もあります。2人の女の子がメイド服を着て、炒飯やラーメンを食べる。そのシーンが作中において一服を入れるようなシーンになればと想定していました。
ーーデフォルメ化された2人の姿が描かれる本作の最後に、2人のリアルな手を描いた背景は?
今成:本作はどちらかといえばバッドエンドな漫画であり、最後のシーンで仕事は人間の手でやるものだったということを表現できればと考えていました。そのため表現したかったことが読み手に刺さるように、仕事が奪われてしまった虚しさを伝えるため2人の手をリアルに描きました。
ーー今成さんが漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。
今成:子どものころから人並みに漫画を読んでいたのですが、漫画を描きはじめたのはプロの漫画家であった人から勧められたからです。漫画を描くことを勧められてからコミティア(一次創作物の即売会)に出展することを決めて漫画を描くようになりました。今から15年くらい前の出来事であったと思います。
はじめて一次創作の同人誌をコミティアに出展した際、幸いにもコミティアのカタログに私の作品を載せていただきました。そのときに漫画を自分の新しい趣味にしようと思いました。
ーー今成さんはSNSに既存の作品を題材とする二次創作物のイラストなども投稿しているかと思います。それぞれの魅力とは?
今成:一次創作では実験的な作品をやってみたくて、これまでページを意図的に破った作品を出展したり、200円と設定した作品に1円玉を張り付け199円の商品として売り出してきました。そういったイレギュラーな表現をすることができる間口の広さが一次創作の魅力だと感じています。
対して二次創作は創作の人口や需要が多いため、SNSで反応を多くもらうことができます。描いた作品をたくさん見てもらえることができ、自身の頑張りを認めてもらえる。そこが二次創作の大きな魅力だと感じています。
ーー漫画を描くことの魅力とは?
今成:もちろん他の人が描いた漫画を読むことも好きです。ただ自分の描いた漫画に自分が期待しているし、自分自身がその漫画を読みたい。そして自分が面白いと思っている自分の漫画ですが、もしよろしければ買ってください。そんな気持ちになれるのが漫画を描くことの魅力ですかね。
ーー今後の目標を教えてください。
今成:特定の画風や作風にとらわれず、作品のアイデアを思いつく限り外に出していきたいと思います。